何て綺麗なんだろうと思った
音もなく流れていく涙
瞬きとともに流れて、流れて、地に痕を刻む
「何でいつも泣いてんだ?」
「えっ…」
関わらないほうがいいとは思っていた
自分が戻ってきた陽のあたる世界は、自分の存在を戸惑っていたから
無理も無い、と思ってボールを追いかける
けれど心の底に沈む微かな虚無感は否めなかった
これが湘北の天女か
異名をもらうほどの美人っぷり
言われてみれば確かにそうだ
涙を流すその姿はまさに天女
対して自分は…
「み、三井くん…」
「知ってんのか」
不良から足を洗った男
目の前の彼女もまた戸惑う存在であった
「悔しいなって思ってて…泣いて…ました」
「あ?」
天女は三年らしい
教室では見たことがない
隣の棟の教室の生徒かもしれない
「バスケット…頑張ってね」
俯いて、顔を上げればもう笑顔
屈託の無い笑顔はつい目が釘付けになってしまうほどで
鳴り響いたチャイムの音に無性に腹が立った
「あ、予鈴。
…戻らないの?」
「サボる」
目を瞑って固いコンクリートに背を預けた
眩しい太陽が目に痛い
「私は戻るね」
老朽した感を漂わせる音が響いて、
体を起こしたときにはそこにはもう奴はいなかった
「くそ…っ」
理由もない虚無感が、
頭上の太陽と重なって見えた