正直動揺した
もう来ないと思っていたから
自分が居座ると知った空間に、踏み入れてはこないだろうと確信があった
「お前…なんか溜まってんのか?」
「えっ…」
俺がそこに居ることなんて知らなかったように天女は居る
今日もその綺麗な涙をぽたぽたと零して
「溜まってないよ」
また笑顔
無性に腹が立った
こんな笑い方
俺はもう一生出来ないから
「そーかよ」
コイツは女だ
細っこくて、いかにも軽そうで…
でもどこか、芯が一本通っていて
その芯はどんな色をしているんだとか
その芯はどこに眠っているんだろうとか
そんなことをぼんやり思った
「三井くんは、溜まってないの?」
「っ!」
ふわりと香ったにおいに反射的に目を開けた
こんなにも近くで見たのは初めてかもしれない
「お前、何でそんな顔してんだよ」
「ん?」
「何でそんな…」
うれしそうなんだよ
「溜まってないの?」
「溜まってるとか、溜まってねぇとか言うなよ…!」
「三井くんが先に言ったんじゃない」
きゅ、と上靴の音がなった
俺は上靴は履いてない
「女が言うな!」
きょとん、という言葉が相応しいほど見開かれた瞳
何故そんなことを言ってしまったのか
偶々
偶々腹が立ったんだ
「女が来るな…」
「女だと駄目なの?」
1、2、3、4…
何で俺、屋上のタイルなんて数えてんだ
「三井くんは、女の子に免疫ないんだ」
「っるせぇ!」
何でこんなにタイミングが良いんだろう
音割れが目立つ機械音
チャイム
「サボるの?」
「…………」
「私は戻るね」
ギィギィ鳴る扉
明日あたりに反対側から蹴っとけば直るかもしんねぇ