「梅の間…梅の間…」

       持ってきた枕を抱えながらは廊下を急ぎ足で進んでいた
       右手にはプリントが握られている
       それを地図代わりにしてここまでやってきていたのだった


       「あれ、…何してるの?」
       「宗ちゃんっ」


       目的地に着いた瞬間、中から神が出てきては思わず大きな声を出してしまった
       しーっと神に人差し指を口元に当てられてごめん、と小さく詫びる


       「こんな時間に…」
       「宗ちゃんこそ、どこ行くの?」
       「俺はもう一回お風呂入って来ようかと思って…信長が五月蝿くて寝付けないんだ」
       「五月蝿い?」
       「いびきと歯軋り」


       まさに迷惑な後輩である


       「は?」
       「私は…あのね、」


       は先程あったことを掻い摘んで話した
       話し終わったと同時に神のくすりといった控えめな笑いが響いた


       「相変わらずその手の話、嫌いなんだね…」
       「だって本当に音するんだもん…」
       「わかったわかった。じゃ、俺と一緒に寝よう?信長が五月蝿いけどね…
        でも俺、今からお風呂入って来るよ?1人で待って…」
       「いいい一緒に入る!」
       「仕方ないなぁ…」


       じゃあ混浴の方に行かないとね、と呟きながら神はの抱えていた枕を持って、
       まだ閉めていなかった自分の部屋にぽいっと投げ入れた

       中から一瞬痛みを訴える声が聞こえたがそこは軽くスルーである


       「じゃ、行こっか」
       「うん…っ」


       ひとまず安心したは、落ち着かせるためにも神と二度風呂することにした















       「宗ちゃん、こっち見ちゃ駄目だよ!」
       「注文多いなぁ…見てないよ」
       「見ないでよ、絶対に見ないでよ!」
       「わかったって。先に入ってるよ」


       神が中に入っていくのを確認して、も髪をくくり、遅ればせながら中へ入った
       温泉特有のにおいがする中は露天風呂だからか、深夜だからか外は少し寒い

       早くも浸かっている神に続いてもゆっくりと身を沈めた


       「誰もいないね」
       「以外とカップルとかの穴場だと思ったのに」
       「そうだね」


       なんてやり取りを交わしながらは神を見つめた
       神もまたを見ていたらしく合わさった視線にお互い笑いあう


       「一緒に入るなんて久しぶりだな…」
       「何年くらいだろ…」
       「写真はいっぱいあるけどね…残念ながら覚えてないや、の裸は」
       「おっ、覚えてなくていいよ!///」


       ぷくぷく…と湯の中で泡を作って遊んでいると、波が立った
       少し離れて座っていた神が隣に座ったからだ


       「だから…不思議な感じ。一緒に入ってたはずなのに初めてで…」
       「私も…」


       湯気が、熱いお湯が顔を火照らせていく
       既にそれらによって温まった神の手がの頬を滑った




       「宗ちゃん…笑わないでね?」
       「何が?」
       「私…宗ちゃんにどきどきしてるみたい…」


       ごまかすように笑うは照れ笑いになっていた
       もはや温泉のせいだけではない笑い方に神も余裕が無さそうに微笑む


       「何で笑う必要があるの?
        俺も…おんなじなのに」



       ぱしゃん、と湯が波打った
       お互い逆上せる寸前のような体を密着させて、は必死で神にしがみつく








       「ねぇ宗ちゃん…呆れないでね?
        ずっと好きだったって言っても」


       「だから、何で呆れる必要があるの?」


       また視線が合わさって、二人は再び吐息だけで笑った
       しかしその音さえもお湯の波音に消される

       お互いのしっとりと濡れた唇が重なって、
       しばらく離れることを知らなかった


       やがてゆっくりと離れたことにの淡い吐息が神の耳にかかる


       「俺も…好きなのに」


       こつん、と額を合わせて神も照れ笑いを浮かべた
       二人の小さな、幸せそうな笑い声が闇夜で響いていた























      あとがき

       こんな幼馴染み居たら良いよなぁ…という気持ちの産物♪
       神さんはやっぱ白と黒どっちにすべきか悩みましたが、
       信長くんには黒、ヒロインには割と白寄りでいきました