「えっと…梅の間…ここね!」
ノックをしようとして、入り口がうっすらと開いていることに気付いた
そっと中を開けると電気が煌々と光った状態の部屋がとびこんできて、
「信長くん…?」
と布団の上に座ったまま眠っている清田に声をかけた
「んー?ぬおっ、さん!」
「ごめんね、起こしちゃって…あれ、宗ちゃんは?」
「さぁー…」
ぼーっと未だ寝ぼけている信長に小さく断って中に入ると、
清田と同室のはずの神の姿は無かった
見回すと、机の上にメモが置いてあり、
そこには見慣れた神の丁寧な字が並べられている
信長、いびきと歯軋りひどいよ
気晴らしにお風呂でも行ってくるから
「だって」
「うわ…神さんに殺されるかも、俺…」
さぁーっと青くなる清田に同情の視線を向けては座りなおした
神への恐怖で目が覚めたのか、清田はぼりぼりとボサボサになった頭を掻きながら
大きなあくびをひとつ零した
「ところでさん、どうしたんスかー?」
「あ、そうそう!聞いてくれる?信長くん…」
最初は眠気を抑えつつも聞いていた清田だったが、の話が佳境にさしかかるにつれ、
その瞳は大きく見開かれ、きらきらとしたものが出てきた
「ゆーれい…?うわぁ!俺一回幽霊って会ってみたかったんですよ!
さん、見に行こうよ!」
「なっ何言ってんの!?私絶対行かない!」
「大丈夫っスよー!俺がついてるから!」
「い、嫌嫌!絶対嫌ぁ!」
「まーまー。近所迷惑っスから」
「んーっ!」
口元を覆われ、軽々と体を抱えられて、
はせっかく逃げてきた道のりをまた逆戻りさせられていった
「ふわーあぁ。出ないっスねー」
「で、出なくて正解なの!物騒なこと言わないで!」
「んー…何が駄目なのかなー。あ、手っ取り早く!」
「きゃあっ!何で電気消すの!?真っ暗!」
ごそごそ、という音が真っ暗闇に響く
これは清田の音だと自分に言い聞かせて、震えていると
そんなの足元を清田が点けた懐中電灯の光が照らした
「これがあるし、俺もいるから大丈夫っスよ!」
「何の根拠…っっ!!信長くん、例の音する…」
「え?」
カサカサ、カサカサ、と響く音
しがみついてくるの背中を撫でてやって、音のする方を懐中電灯で照らすと、
そこには、机の上に置かれたプリントがクーラーの風に揺れていた
「な、何か居た…?」
には状況が見えていない
さすがに自身もひやりとした清田は真相を伝えようとして口をつぐんだ
腕の中には大好きな先輩
しかも真っ暗闇で、怖さのあまりぎゅっとしがみついてくる
胸元に当たる柔らかい感触も否めず、清田は喜びをかみ締めていた
「信長くん…?」
「あ、い、いやっ!何か白い影が居たんスけどー、懐中電灯の光で逃げちまいました!
いやー、さん!この神奈川ナンバーワンルーキーがいるからにはもう大丈…っ」
「ふぇ…」
「な、ななな泣いてます?もしや!」
確かに震える腕の中の感覚に清田の良心が痛んだ
本当のことを言ってしまおうか、という思いが心をよぎるが、
すぐにそれは新しい欲望によってすげかえられてしまった
の泣き顔が見たい、という欲望に
いそいそと光を自分たちのほうに照らして、
さらさらな髪を撫でてやると、の顔が上を向いた
その可愛さに、またもや喜びをかみ締めている清田
そんな清田にきっと天罰が下ったのだろう
が震えながら発した言葉
「の、信長くん…落ち武者みたいで怖いから照らさないで、あんまり…」
「お、おちむっ!!」
ガガーン!という音が響き渡る
まるで天井から落ちてきたタライを頭に直撃したような、そんな感覚
全てはこの無造作ヘアと、無造作お手入れと、寝相の悪さによる産物のせいなのだが、
清田を喜びの絶頂から突き落とすには十分すぎた
「そ、そそそんな…」
いじいじ、と床にののじを書いていじけていると、
ふいに背中に衝撃が走った
「私守ってくれるんでしょ?しっかりしてよぉ…」
ぎゅうっとくっつく感覚に清田はあっさり蘇った
可愛い、という想いの元に
「信長くんも、彼氏としては頼りがいがあるんだか、無いんだか…」
「そんなぁ…?…か、彼氏って言いました?今!」
背中から離れたと同時に眠ってしまったの姿を見て
清田はをゆするが、もう反応は返してくれない
「さーん!お願いしますよー!」
泣き叫ぶような悲痛な清田の声が、丑三つ時に響いていた
あとがき
最後に書いたからかもしれませんが…
一番難しかった!!!
何か…やっぱり信長くんはオチというか、甘い空気は作れなくて…
なんか…ね、彼の純粋な何かを壊しちゃいそうで(笑)
でも楽しかったです。これからもっと研究しようv