おびえてなんかいない
だってもう半年の付き合いだし…
恐がってなんかいない
あれでも一応理性はあるし…
「男はな、いざって時にそういう歯止めなんか利かへんようになってまうんや」
この一言はいつもより重く感じた
同じようなセリフは幾度と無く聞いているはずなのに
深く息を吸い込んで、ドアノブを握る
なんでこんな緊張しちゃってるんだろ、と突っ込みつつドアを開けた
中には不機嫌そうに歪んだ形の良い眉の持ち主
蒼い瞳も不機嫌そうで、当然発した声も不機嫌きわまりなかった
「遅い」
「…ごめん。だって片付けしてたんだもん…」
彼の場合、こういう事情も通用せず、言い訳と取られてしまう
しかし今日は記念日であるためか、そんなに言うほど遅れなかったためか何も言われなかった
「…ねぇ。怒ってる?」
「…フッ、怒ってねぇよ」
良かった
早めの対応がやっぱり良かった
こういう風に素直になるのは正直苦手だが、怒らせてしまうともっと苦手なことになる
腕を引っ張られて椅子に座らされるかと思いきや
背中に固い感触が当たった
さっき整理したばっかりのプリントが背後でバサバサと音をたてて落ちていく
視界いっぱいに広がった天井は、跡部景吾という影で覆われた
「い、いきなり!?」
「…また誰かに何か吹き込まれたみてぇだなァ」
「……よ、よくわかったね。そ、それはそれでいいから早く離してよ!」
「断る」
先程の忍足との会話が妙に頭に響いた
今日こそ、モノにされる
その一言は10月4日に聞くことによって心臓を縮み上がらせたのだ
「跡部」
「…何か言うことは?」
まるで処刑される前の罪人扱いだ
しかも濡れ衣を着せられたっぽい人
で、目の前のこの人が悪代官
「お誕生日、おめでとう?」
「良い言葉だ。…始めるぞ」
「やっ、ちょ、や、…やだってばァァ!!!」
「ぐッ…」
私の膝が跡部の腹部にクリティカルヒットした
さすがにやりすぎたか、と顔色を伺えば、
は、半端なく青筋がたっているであります!!!
「躾が足りなかったみてぇだな…」
「あ、あのぉ…け、景吾さん?」
「俺様の屋敷で調教だ」
「え、あ、あのご冗談…ギャーッ!!!」
どうやら今夜は本当に帰れそうにないみたいです…