咲き乱れる桜、出会う










               「1年A組、A組は・・・あ、ここだ」


               半分開いている扉から中を覗いてみた
               そこには一年間席を並べるであろうクラスメートの姿がいっぱいいる
               さすがは私立学校、教室有り得ないほど広い
               外部から転入したにとっては見知らぬ人たちばかり
               こうしていても仕方ないので黒板の指示を確認して自分の出席番号の机に腰掛けた

               小等部、中等部と一緒の学年だと外部の者はすぐに解るらしい、教室内では注目の的だった
               そんな視線や噂する小声もには聞こえない、というか解ってない
               物珍しげにきょろきょろと辺りを見回すと隣の席の男子と目が合った

               う、うわぁ・・・。爽やか・・・!と、というかこんな中学生いるんだぁ・・・!
               お兄ちゃんも身長高いほうだと思うけど、この子はもっと高いし・・・。
               この銀髪って、て、天然なのかな・・・?でも日本人ぽいし・・・、それに爽やか過ぎて直視できないし。

               隣の席に座る男子生徒は自分と本当に同学年かと疑うほどの爽やかぶり
               こんなに綺麗な銀髪と優しい笑顔を見れば誰だって自分が汚れているとか思いそうである
               不良が赤ちゃんを見たときと同じような心境には立たされていた


               「君、外部から入ってきたんだね。これから1年よろしくね」
               「あ、うん。えっと・・・?」
               「俺、鳳長太郎って言います。君は?」
               「宍戸です、こちらこそよろしく」

               握った手のひらは大きくて温かかい
               お兄ちゃんと一緒に居るときに人肌って安心するなって思ったけど、
               鳳くんもすごく安心するなぁ、声とか、笑った顔とか












               「あ、そうだ。宍戸さん、この後時間あるかな?」


               一時間目が終わって、鳳くんが言った
               今日の予定としては三学年を通じて主な行事は入学式だけ
               三学年全員HRの一時間しかないから、一年生は自由に校内見学をすることを許されていた
               鳳くんの言葉にテニスコートで自分を待っているお兄ちゃんの姿が浮かんだけど、
               校内も見学しておいたほうが良いだろうという思いが勝った
               校舎とか早めに覚えておけよ、とか言ってたしなぁ、お兄ちゃん
               確かにこれだけ校舎とか教室とかあったら見学しておかないと確実に迷いそ・・・。


               「宍戸さん、外部入学だから校舎とか解らないだろ?俺でよかったら案内するよ」
               「本当?嬉しい!あ、でもいいの?鳳くん、時間とか・・・」
               「構わないよ、その代わりと言っちゃなんなんだけど、俺のクラブ見学にも付き合ってくれるかな?」
               「うん、いいよー。あたしも行きたかったし」


               鳳くんって、初対面と思えないほど話しやすいなぁ
               何か従兄弟のお兄さんって感じだし

               え、あの男の子こっちに来る・・・
               偶然かな?ぐ、偶然じゃないや、こっち来る・・・!
               しかも何か睨んでる・・・!?(←一瞥しただけ)


               「鳳。先生が日誌渡してくれって。ほら」
               「あ、ありがとう。日吉」


               その男の子は教室の端の方に座っていた
               そっか、日吉くんって言うんだ・・・
               そういえばちらっと見ただけだけど先生が話すとき以外はずっと本読んでたような・・・
               ま、真面目そう・・・。

               やってきた日吉に興味津々なの視線に日吉は目もくれなかった
               目が合って完璧に無視されるのは初めての経験だったにとって
               日吉への第一印象は”怖い人”
               だが、”良い人”の鳳と話している限りでは仲良くなれそうな望みが湧いてきた
               の存在に気づいて視線を送る日吉には出来るだけ満面の笑みを作った・・・つもりだった
               それでも日吉から見ればひきつっているということが見え見えで、その必死さに小さく吐息だけで笑った


               「宍戸です。よろしくね、日吉・・・くん」
               「日吉若。よろしく」


               良かった、挨拶はしてくれた・・・!
               じゃ、次は握手を・・・

               握手、とばかりに右手を差し出すと、はぁ?とでも言いたげな表情で見られた
               その表情から”何で俺がそこまでしなきゃいけないんだ、握手は必要ないだろう”とでも思っているのだろうかとは想像した
               実際にが思っているように日吉もそう思っていた訳なのだが


               「そうだ、日吉も一緒に校内見学行こうよ。せっかく俺たち友達になったんだからさ」
               「・・・俺はお前ともこいつとも友達になった覚えはないけどな」
               「そんなこと言うなよ、四年生の時に同じクラスになった仲だろ(にこっ)」
               「・・・・・・良いが、手短にしろよ。俺の用事があるのはテニス部だけだ」
               「あ、俺もだよ!」


               鳳くんと日吉くんってまだ会ったばっかりだけど・・・
               冷静な飼い主とじゃれ回る犬・・・みたい

               少なくとも、小学校のとき一度だけ同じクラスになったとはいえ、この仲の良さぶりは何なのだろうか
               対極にあると言ってもいいような二人の性格からして、普通に会話を交わしているのは不思議な光景のように感じられた。
               それも、鳳の人懐っこい性格故、といったところだろう


               「二人とも、テニス部に入るの?」
               「うん、俺も日吉も小学校の時テニス部だったんだ」
               「俺は一時期だけだ。顧問の先生が人数が足りないとか言うから・・・」
               「でも楽しかっただろ?ダブルス組んだこともあったんだよ。すぐにやめちゃったけどね」
               「そうしたほうが賢明だろう。俺とお前はタイプが違うからな」


               小学校の部活でテニス・・・!?ハイソーだなぁ・・・。
               あたしの前の小学校なんて運動部はドッジボール部が大人気だったのに・・・!

               ついていけない、と思った
               小学校の部活にテニス部が織り込まれているとは
               テニス部なんてまずはコートがいるし、ラケットやボールの備品もたくさんいる
               さすがは私立の学校、さすがはテニスの名門氷帝学園様々である


               「じゃ、見に行こ!あたしも、テニス部に入りたいんだ!」
               「本当?練習の時とか会えるかもね!ね、日吉!」
               「とっとと行くぞ。(・・・・・同じタイプが増えて辛い・・・)」


               三人は、テニスコートへと向った
               氷帝学園が誇るやたらと大きいテニスコートは広い学園の敷地内の一番端に設置されていた
               一応中等部男子テニス部・女子テニス部兼用とは書いてあるが、ここまで広くなくてもいいだろう
               男子テニス部と女子テニス部はきっちり分けられていて、境界線のごとく高いネットが置いてあった


               「宍戸さん、女子テニス部はこっちだって」
               「あれ、言ってなかったけ?あたし、男子テニス部のマネージャーになろうと思って」


               あれ?鳳くんが固まってる
               ひ、日吉くんも固まってる・・・!か。固まってるというより信じられないって感じだけど・・・。
               何か変なこと言ったかな?日吉くんにいたってはあたしを嫌ってるみたいだけど、それにしては・・・

               行こう、と軽く袖を引っ張っても動かないほど驚いている鳳
               がし、と日吉に肩を掴まれて鳳の手のひらが額に当てられた
               まるで重病者を発見した時のような慌てぶりである


               「お前、本気か!?男子テニス部のマネージャーって・・・!」
               「宍戸さん!やり直すならいまだよ!熱は無いみたいだね・・・!」
               「ふ、二人とも息ピッタリだね。でもあたしは本気だよ?だっておにい・・・「!」


               この声は、お兄ちゃんーっ!(歓喜)

               男子テニス部コートから宍戸がやって来た
               学校では練習に励む兄の姿を見れたことでご満悦気味なを確認して無事テニスコートまで来れたのかとほっとした宍戸。
               はぼーっとしているし、何か興味が惹かれるものがあったら直ぐにそっちへ行ってしまう



               「長太郎に若じゃねぇか!久しぶりだなぁ!」
               「お久しぶりです、宍戸さん!」
               「ご無沙汰してます」
               「お兄ちゃん、二人と知り合いなの?」
               「前に小等部と合同練習があってよ。それにしても、と同じクラスだったのかお前ら」


               はしげしげ、と再び兄の確認をすると嬉しさを堪えきれなくなって抱きついた
               朝別れたばかりなのに、のブラコン精神は休まることはない
               宍戸も慣れたものでを支えてやりながらぽん、と頭を撫でた


               「、俺今汗くさいぞ?」
               「くさくないよー、だってお兄ちゃんだもん!」
               「理にかなってるようでかなってないような・・・」


               学校で見るお兄ちゃんもかっこいい
               テニス部のジャージがすっごく似合ってるし、良いなぁ・・・
               やっぱり氷帝学園に来て良かったぁ


               ぽり、と頬を掻いてから宍戸は改めてここが何処なのかを思い出した
               女子テニス部員も、男子テニス部員も何だ何だと少しずつ騒ぎ出している
               当たり前である、いきなり1年女子が宍戸に抱きついたのだから

               ここではさすがににも我慢してもらうか、と謎の決心をすると引き剥がしにかかった
               だが、その行為も日吉と鳳の見事なタッグによって必要無きものとされた


               「馬鹿か、お前。宍戸さんになんてことを!」
               「ちょ、ちょっと。それはさすがにまずい・・かな?」
               「嫌だよ、せっかくお兄ちゃんに会えたんだもん。絶対、離れない!」


               自力で男子二人の力から脱出できるの力はなかなかのものであろう
               だがそれも、日吉にはかえって悪印象を与えるだけで、鳳にとっては憧れの宍戸を守るという使命感を与えるだけである。
               が兄の胸に再び戻ったその時、流暢な関西弁が響いた


               「何やぁ?自分、やっぱり彼女おったんやないか、宍戸」
               「ていうより、すんげぇ女だな。こんなところで抱きつくか?普通」


               え、何今のすっごい低い声・・・!しかも関西弁・・・!?
               この人、前髪目にかかってるけど視力悪くならないのかなぁ?
               こ、こっちの人もすご・・・。前髪が、なんと言うか・・・V?
               そろえるの大変だったろうなぁ・・・

               コートから姿を現しのはたメガネ関西弁男子と中々見られないほど見事なV字カットの男子
               美形彼らを見て鳳に始まって今日は美形揃い祭りなのだろうかと思った
               日吉も何だかんだと言って笑えば乙女のハートをゲッツな顔である
               呆然と二人組を見つめるを見て気に入ったのか、関西弁男子が品定めするかのようにを見つめた


               「そんなんじゃねーって。こいつは俺の妹だ」
               「妹!?」
               「マジかよ!あー・・・、言われてみればそうかも。目元とか似てるな」
               「い、妹!?宍戸さんと宍戸さんが・・・?」
               「ややこしいぞ、お前。大体、さっきからお兄ちゃんて何回も連発してるだろうが」


               各々の反応と共に大衆も納得したようであった
               のブラコンぶりも少し前まで小学生だったという理由でスルーされた
               関西弁男子は品定めが終了したのか、満足げに手を叩いた


               「合格点や。自分、名前なんや?」
               「あ、えと・・・、です」
               「ちゃんか、覚えたで。俺は忍足侑士な。ほんでこの小さい兄ちゃん見えるか?」
               「そこまで小さくねーよっ!・・・向日岳人、よろしくな宍戸(妹)」
               「こちらこそよろしくお願いします。忍足先輩、向日先輩」
               「忍足先輩なんて他人行儀な。愛称で呼んでくれて構わへんねんで。
                例えば、侑士とか、侑士とか、侑ちゃんとか、侑士とかー・・・」
               「ほぼ一緒じゃねぇか」
               「もちろんちゃんの好きなように呼んでくれてええで?」


               愛称・・・あだ名かぁ
               確かに忍足先輩ってすごい名前だから中々愛称つけてもらえないのかも(←独断)
               忍足、何て中々ない名前だもん。
               風貌的なことからあだ名をとるか、でも特徴的な名前だからそこからでも・・・

               忍足の言葉にじーっとの視線が二人に突き刺さる
               愛称を必至になって考える姿はまだ幼さが抜けず、一年生ならではのもの
               満足そうに笑う忍足と少し恥ずかしい向日だった


               「じゃ、おっしーとがっくん!」
               「・・・・・・俺らは芸人か、侑士。ていうか、俺別に愛称決めろなんて言ってねーし」
               「お、おっしーか・・・。(俺的には侑士とか・・・が良かってんけど・・・)」
               「下心見え見えだぞ、侑士。彼女にフラれたからって何でも許される訳じゃねーぞ」
               「ほんなら敬語もいらんわ。おっしー言うてんのに敬語やったら何やおかしいからな」
               「俺の話聞けよ!」
               「本当ー?じゃあ敬語無しにするねー」
               「お前ものるなって!」
               「おい、何してやがる」


               傍から見ればまるで漫才コンビのような三人に鋭い声が聞こえた
               声のした方を振り向いては激しく驚いた


               な、何この人!本日の美形祭りのボス!?
               おっしーの時も思ったけど、すっごい声だし・・・。
               何より、目、青いし。カラコン・・・?氷帝の校則って結構緩いのかな・・・?
               おっしーとがっくんの髪の色とか・・・。

               氷帝のレギュラージャージを上に羽織って腕組みをするだけなのにこの貫禄はどこからくるのだろうか
               が今まで見てきた美形男子の中でもかなり上位に位置しそうだ


               「何だよ跡部。今日は部活してんのかよ」
               「この間は特別だ。たまには俺様無しじゃ生きていけねぇ女を相手しなきゃならないんでなぁ」
               「・・・・・・自分、ほんま女たらしやなぁ・・・」


               しかもナルシー!?
               ほ、ほんとに何なのこの人・・・!

               跡部と呼ばれた男がのおとがいに手を添えて上へ向けた
               跡部の青い瞳にじっくりと見つめられ、自然と顔が赤くなった
               しばらくしてがっかりとでも言いたげなため息をつかれ、跡部の手が離れていった

               「おい宍戸。妹とはいえ部外者は出ていかせろ」
               「ちょ、ちょっと待って下さい!」
               「あーん?」
               「あたしはマネージャーの立候補者です!部外者じゃありません!今はまだ部外者かもだけど・・・。
                人の顔見た矢先に追い出すなんて失礼じゃないですか!そ、そりゃ美人じゃないかもですけど・・・。」
               「お前がマネージャーだと?」


               痛っ!この人腕掴んだ腕掴んだ・・・!
               一応あたし女の子なんですけど・・・!
 
               強い力で腕を掴まれては顔をしかめた
               自分とは比べ物にならない力で抑えつけられては抵抗もままならまい


               「こんな細い腕もったやつがどこまで出来るか見ものだなぁ。
                素直なやつだったら俺の女にしてやってもいいけどな」
               「な・・・っ!ば、バカなこと言わないで!アホですか、アンタ!」
               「ほぅ・・・?1年坊主がこの俺様に生意気な口叩きやがって・・・。それなりの覚悟は出来てんだろうなぁ?」
               「坊主じゃないもん!アンタだってただの部員でしょうが!」
               「フン、俺様がそんな低い地位にいると思ってんのか?アーン?
                俺は今年の部長候補、跡部景吾だ」
               「それは自分で言うことやないやろ・・・」
               「ぶ、部長候補・・・!?」


               これが!?部長候補・・・!?
               あ、有り得ない有り得ない!
               他に人いないんですか、この部は…!


               「明日の放課後、マネージャーの試験だ。
                宍戸の妹ってことに免じて特別に俺様が試験を受ける資格を許可してやる。
                それからはっきり言っておくが、お前みたいな奴は無数にいるからな、落ちるぞ」


               跡部はポケットから紙切れを出すとの額に貼り付けて去っていった
               ある人にとっては非常に腹の立つフン、と鼻で笑う跡部の癖には早速怒り心頭だった
               怒りで顔が真っ赤になったに目もくれずコートを出て行った


               あの人、完璧にあたしのこと見下してる!
               跡部景吾め・・・、見てなさいよ!
               試験だろうと何だろうと意地でも受かってお兄ちゃんと一緒に楽しい中学校生活楽しむんだから・・・!


               「大きなお世話よーっ!!」


               すでに聞いていないだろうと解っていても叫ばずにいられなかった
               胸中の怒りと決意のあらわれをすっかり小さくなった跡部の背中にぶつけた

               跡部景吾への第一印象は”嫌なやつ”

               イヤミでナルシーで最悪な奴






















               あとがき
               久々のお兄ちゃんと一緒、です。跡部登場ですねー。長太郎くんたちやおっしーたちも登場のお話ですが、跡部メインです。
               何というか、自分の中でこんな人いたら嫌だなぁという思いで全部形成されてます、跡部
               ヒロインじゃなくても嫌だっつーの。次話からは色々伏線も織り交ぜようかと。
               このお話は大分前に書いて溜めておいたやつなのですが、久々に読むとちょっと面白かったです。
               次に登場は榊監督だぁー。