たくさん、
泣いて
泣いて
泣いて
眠った
気づいたら自分の部屋のベッドの上で
時計を見ると朝の4時だった
自然にお腹の音がなって、体を起こすと部屋の隅にたてかけてある大きな鏡の中の自分と目があった
「うわ、不細工…」
真っ赤に腫れた瞼が妙に可笑しくて、笑った
04.君の哀しむ顔
「あら、起きたの?」
「うん、二時間前くらいに。
ねー、お母さん。私どうやって帰ってきた?」
「かっこい〜い男の子におんぶされて帰ってきたわよ。
仁王くん…だったかしら?」
「仁王っ!?」
慌てて立ち上がろうとすると椅子で足を打った
あまりにも鈍くさい自分の行動に涙が出そうになる
母はエプロンをつけながら朝食の支度をするため台所に向かっていた
「すごーく礼儀正しい子だった。
お母さん、あんたにあんなかっこいい彼がいるなんて知らなかったわ」
「ちっ、違うよ!仁王はそんなんじゃなくて…ただの友達」
「そうなの?」
「そうなの!」
軽快な音とともにトーストが焼けた
それを押し込むようにして口に放り込みながら母を睨んだ
「あら、怖い。ちゃんとお礼言っておきなさいよ」
「うん」
母に誤解されてからかわれたのはおもしろくなかったけれど、
あの仁王が丁寧な言葉で母に話をしていたかと思うと猛烈におかしかった
「何やってんの?」
「あ、!聞いてよー。エリちゃんたらとうとう彼出来たんだって!」
教室に入ると、一人の女子を他多数の女子が囲むようにして集まっていた
その輪の中心に嬉々とした表情で“エリ”が座っている
「どんな人―?」
「前に言ってた子でしょ!このこの」
「あはは…えと…うん」
「エリ顔真っ赤!照れちゃって〜」
「良かったねー」
普段大人しいこの子がこんなにも嬉しそうに顔を赤らめている
恋をすれば美しくなる、とは云うけれどまさにその構図じゃないか
こういう幸せに満ちた人を近くで見るからこそ人を好きになることをやめられはしない
ついそう思ってしまった
「私、新しい恋するわ」
「何じゃ、出会い頭に」
「どっかに良い人転がってないかな〜」
「転がってるような男はええことないぞ」
「女磨いて良い男捜す」
「そんな腫れた瞼で言われてものう…」
「だから仁王もなんかやって?」
「…………」
仁王が気だるそうに動いた
屋上に来てから二分ほど経っているけれど、一度もこちらを見てくれなかった
それは今も同じで
それなのに腫れた瞼を指摘してくるところが意地悪だった
「その質問の意味がようわからんのう」
「“私は新しい恋さがす”から仁王は違うこと」
「…お前1人っていうコースは無いんか?」
「無い!」
はぁ、とため息が聞こえた
ガシャンと音がする柵によりかかって見下ろすと目が合った
どちらともなく小さく笑いが漏れる
いつも通りの雰囲気が流れていた
「なら、俺は一切女関係切る」
「え…」
「だから、ごまめは頑張りんしゃい。
俺にこげな大きいことやらせるつもりなんじゃろ?」
「わ、わかった…。その代わり、ほんとに全部の女の子と関係切るってことだからね」
「俺は一度言ったことは覆さんよ」
本当に、そんなことできるんだろうか
心のどこかでそう疑っていた
まず、仁王が付き合おうといわれて了承した女の数を覚えているとは思えないし、
別れよう、と言って素直に聞かない女をなだめてられるとも思えない
でも、そう思っていたのは私だけらしかった
「終わったぞ」
「早っ。本当に全員分かれたの?」
「当たり前じゃ。そういう約束じゃったじゃろ」
一時間後、仁王が戻ってきた
私はどうせ一日かかるだろうと思って横になって眠ろうとしていたのだが
仁王の一言に起こされてしまい、うっすらと目を開けた
ついで、信じられない姿の仁王がいた
腫れて赤くなった頬
いくつもの、激情が飛んだんだろう
好き、という気持ちが大きく膨れ上がりすぎて、こうなってしまった
悲しみのあまり、ぶつけざるを得なかった
『女なんか、何にも興味ない。
ただの、暇つぶしじゃ』
それでも、この人は女を傷つけなかった
面倒くさいと呟いても向い合っていた
なら、仁王自身も相手の女の人のことを少しは想っていたのだ
無駄なことなんかしない
会いたくない嫌いなやつのところなんか行くわけない
どうして、わかってあげないんだろう
この人なりの
不器用で
無骨な
深い愛情を
「ご苦労様・・・」
「次はごまめの番じゃな」
「そうだね・・・良い人見つけるよ」
「泣くと余計ブスになるぞ」
「うるさいっ・・・」
理解してもらえなかった
気付いてもらえなかった
どちらでも、関係ない
少しでも愛していたヒトにぶつけられると、傷は深い
「ありがとう・・・」
わかっていたはずなのにね
どうして私のためにそこまでするの?
気付かないとでも思ってるわけ?
「俺は勝手な人間なんじゃと」
嗚呼、人はこの人を最低で最悪な男だと言うけれども、
こうして儚く笑ってみせるところが、傷ついたガラスにしか見えない
こんな私は・・・おかしいですか?
惚れた弱み・・・かな?
アトガキ
とうとう4話まできましたね。ちょうど折り返し地点かな?
ごまめは、書いてて楽しいです。
ヒロインが割りとこざっぱりしてて書きやすい
女の子っぽいところもあるけれど、すっきりしてる感じで
まさに悪友、みたいな二人を書くのが楽しくて思ったよりも事の運びを渋ってしまいました(笑)
次はらぶらぶすうぃーてぃになるかも…。ご期待あれ☆