夜の学校はそれは不気味
     真っ暗で、今にも幽霊が出てきそう


     「仁王…」


     呟いて、薄く開いた門の中へ入った










 07.無数の輝く星










     ぱちゃん
     ぴちゃん

     水がはねる音がする

     足が重い

     それに冷たい

     …滑るし



     「何やってんのよあいつは…」


     呆れてろくに文句も零せない
     学校の上の階の方は廊下が水びだしだった

     その水は上から下へ
     つまり屋上から流れてくる
     そのうち一階の廊下まで流れてしまうだろう




     「やっと…この階段」


     見慣れた階段がそこにはあった

     「何か記憶が走馬灯のように駆け巡ってきた…」

     ゼェゼェと息をきらしながら手すりに掴まり、水の階段を昇った

     「ここまで来たんだから…決着、つけたいな…」

     ドアノブにしがみついた
     ゆっくりと水圧があるのか重く開くドア

     開けば、振り返る仁王の姿がそこにあった


     「久しぶりやのう」
     「一言目がそれ?」

     ふっと仁王の吐息が聞こえる
     仁王の立っているすぐ傍の水道は3つとも開きっぱなしでだばだばと水が出ていた

     「どうすんの…学校こんなにして…
      明日の朝、みんな学校来たらびっくりするよ…」
     「そうやの」
     「…どうでもよさげだね」


     ぎゅっぎゅっと音をたてながら水道を止めていると、仁王の手によってやんわりと止められた


     「まぁ、待ちんしゃい」
     「何?」
     「とりあえず、座るぜよ」
     「はぁ?」

     座るってどこに? と視線で問いかけても曖昧な頷きしかもらえず、
     ばしゃっという音とともに仁王が腰をおろした


     「早よ座りんしゃい」
     「…わかったわよ」


     冷たい水がお尻を濡らす
     一気に体温が奪われていくようだったが、真夏特有の蒸し暑さに火照った体にはちょうど良い


     「ね…何で?」
     「スクリーン…。よう見てみんしゃい」
     「また訳わかんないことを…」

     ため息をついて、中途半端に下がった靴下をあげようと水の中に手を突っ込めば、あることに気づく

     「にお…」
     「中々凝った仕掛けじゃろ?」

     屋上の床に、数え切れないほどの星がきらめいていた
     ふっと上を見上げれば空にも満天の星
     水がスクリーンのように空に輝く星々を見事に描いていた

     「おかしいのう…。そろそろだとは思うんじゃが…」
     「何が?」
     「ペルセウス座流星群」

     何かテレビで聞いたことある…そう呟けば仁王が得意げに笑った

     「今夜の12時から1時がピークだそうじゃ…。
      やっぱりこの辺りは明るいから見えんかもしれん…」
     「でも今日、すごく晴れてるよ。こんなにいっぱいの星見たの久々かも」

     そっと右手でうつわを作って、水に映った星をすくう

     「ね、見て。星捕まえた」
     「良かったのう」
     「へへ、たまには女らしいことするでしょ」
     「…あぁ。なら俺も、」

     がしっと力で腕を掴まれ水が零れていった

     「ごまめ、つーかまーえた」
     「…捕まっちゃった」

     「せっかく、ごまめにしてやったのにのう…早う逃げんからじゃ」
     「疲れたのよ。意地張るのに」

     ふっと笑う私に仁王もつられて笑った

     「あ!流れ星!」
     「お…やっときたか」
     「わぁ…嘘みたい…ほんとにいっぱい…」


     降るようにいくつもの流れ星が空を過ぎる
     上にも下にも
     どこを見ても星の大群だ

     今なら

     ふっと頭によぎる

     今なら、素直になれる

     そう、思った










     「仁王…好きだよ」










     「…随分と素直じゃのう」
     「ここまでしてもらったんだもん。…これ以上の機会ってない…」
     「鬼に惚れてもいいんか?」
     「…何だって良いよ。仁王であることには…変わりないもん」


     夏場でも冷たい手とか、
     たまに大人ぶるところとか、
     有り得ないくらい側面が多いやつ



     「俺のごまめじゃ…俺しかつかまえられん。もう…逃がさんぜよ」




     ごまめ、愛しとうよ

     

     
ねぇ、いつか

     ごまめの意味教えてね?




     
彼は私のことをごまめと呼ぶ




     映してみた空には…











     アトガキ
            終わりです!! はー…やっと…って感じですね…
            思えば、一年前のこの時期あたりに思いついたネタでした
            ひょんなことから『ごまめ』の意味を田舎出身のお母さんに教えてもらい、
            それを仁王さんに合わせて
            
            そして当初はもっと暗い設定でした
            主人公のお母さんが体弱くして主人公を生んで死んでいて、だから主人公の身長は小さい、と。
            主人公が先輩にフられるのがありましたが、あのシーンも体のことを言われてショックを受ける
            というお話を考えていました
            まぁ、色々考えた結果、暗すぎるの止めちゃったんですけど
            やっぱ明るく締めたかったので(笑)
            
            あと、最終話の7話はとんでもねぇことになってますね
            これアレです。解る人には解る某漫画・アニメと同じです
            あれの方がもっとロマンチックなんですけどね、屋上庭園だから…(笑)
            『ごまめ』ではこの二人は好きとかそういう感情も飛び越えてる関係、とかいうのを強調したかったので、
            多少の無茶をきかせてもらいました
            
            実は、最終話には1つだけ隠された文章が
            まぁ、ヒロインの本音です。結局はわかってなかったのかーっていう謎の投げかけ
            パソコンの方のみ、読むことが出来ます。カチッと押してピーって感じ。まぁ反転ですな(笑)
            ギャグ要素として受け取ってくださってよろしいです。
            

            さてさて、様々な謎をかけてきた『ごまめ』ですが
            ごまめ、とは何ぞや?
            
            ごまめ、とは地方の言葉です。要約して言っちゃうとね。
            小さい子供同士で遊んでる場って本当に近所の子がいっぱいいるじゃないですか
            大きい子も小さい子もみんな一緒くた。だって小さいからね。
            それで鬼ごっことかやると、絶対体格差が出てくるので、ハンデをつける
            そのハンデがある子を、親しみをこめて『ごまめ』と呼ぶそうです

            その話を聞いたとき、なんか胸がぽっと温かくなるような気分になったのを覚えています
            ちなみに、うちの母も『ごまめ』だったそうです(笑)

            そこからごまめを特別な子、と引っ掛けてこの『ごまめ』が出来ました
            仁王さんは、最初から主人公のことを特別なやつと呼んでたんですね
            恋愛的感情は無かったにしろ、自分の世界に深く関わっている、と認めた人間でしたから
            
            もともと短く連載するつもりだったので、結構1話1話が駆け足でしたが、
            まぁ…満足度は十分の八ってとこですね。

            仁王と主人公の掛け合いが上手くいったのが良かったですv
            
            長々と語ってしまいましたが…、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!


















            

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