「まったく、胸くそ悪ィったらねェや。ねぇ、近藤さん」
「うむ…俺の知らない間にこんなことが起きていたとはな…」
真選組血風帳
1.これってまさか風前のともし火?
早朝起床、鍛錬、刀の手入れ、巡回の持ち場確認、加えて朝議
真選組の朝は早く、そして忙しい
男だらけのむさ苦しい屯所は今日も暑かった
日々江戸の平和の為に汗をかき、流し、
それでもやり方が乱暴だと世間の風に強く吹かれながらも懸命に生きてきた
だが、そんな彼らを地獄へ近づけようとしている人物がいる
「局長さん」
「あ、これはおトキさん、今日もご苦労様でした」
「局長さん、ちょっとお話があるんですがねぇ…」
「?…なんでしょう」
朝、皆が揃って大食堂で朝食を取っていると、屯所の女中筆頭のおトキさん(78)がやってきた
彼女は20の頃から家事手伝いを仕事とするベテランで、真選組屯所の女中には数年前から勤めていた
若いアルバイトの子からパートまでテキパキと指導をしていた元気なおばあさんだ
食事を中断して、部屋を出て行く近藤とそれに続くおトキ
襖が閉まった瞬間に、隊士たちは自分たちの白ご飯の上におかずをのせると、
それを持って、移動し始めた
「ごめんなさいねぇ…お食事中だったのに」
「いえ、構いません。それで改まって話というのは?」
「実は、私の娘がね、赤ん坊を生んだんですよ」
「それは…!おめでとうございます!」
「ありがとう…遅くして生んだ子だから嬉しくてね。それで、娘の体を労わってやりたくて…、
名残惜しいけど、しばらくの間屯所を留守にしようと思いましてね…」
嬉しそうに目を細める老婆に近藤も豪快に笑った
「そんなことですか、どうぞ行ってきてください!」
「えぇ…でも…私が居なくなったら…」
「大丈夫です!女中は何もあなた一人じゃないでしょう!」
「いえ…私一人です」
「はっはっは!またまたご冗談を。さ、早く娘さんに顔を見せてやってください!」
近藤は老婆を見送った
少しとまどいつつも、嬉しそうに手を振る姿を見て、近藤も嬉しそうに手を振った
「…マジで?」
「マジでさァ。これ、見てくだせェ」
沖田がテレビのリモコンのスイッチを押すと共に、画面に結野アナが映った
画面右上には、大層なロゴで『激突☆真選組特集!』とある
『江戸を守ることが役目の武装警察真選組について今日も語っていきましょう。
解説は、日本の暴力系に相応しいYさん、司会進行は私、結野が勤めさせていただきます。
Yさん、最近の真選組についてどう思われますか?』
『えー…そうですねぇ。最近は特に過激な行動が多くて嫌になりますよねー』
モザイクがかった声と、聞きなれた人気アナウンサーの声
あり得ねぇ、としばし固まって見ていると、後ろの方で土方が煙草に火をつける音が聞こえた
「この間からやってるらしい。マスコミも調子に乗ってやがる」
「土方さんが悪評ばっかりバラまくからですかねィ。まったく、困ったお人だァ」
「半分はテメェのせいだろうが!!」
『ここで、元真選組女中を勤めてらっしゃったKさんに、お話をうかがいましょう。
Kさん、真選組の私生活とはどのようなものなのでしょうか?』
『基本的にー、暑苦しいし、男くさいし、なんでもかんでもを士道で片付けちゃってますねー。
私たち女中の仕事もすごい疲れるんですー。やたら食べるし、洗濯物多いし、ゴリラはいるし』
「近藤さん、テレビで取り上げられてますぜ」
「嬉しかねェェェ!!!」
『なのでぇー、みんな辞めちゃったんですよー。今はおばあさんが一人いるくらいかなー』
・
・
・
・
・
・
「トシ、おばあさんっておトキさんのことだよな」
「…そうだな」
「俺、さっきおトキさんと喋ってたよな」
「そうみてぇだな」
・
・
・
・
・
・
「やっべェェェェ!!!最後の女中帰しちゃったァァァ!!!」
「局長、まじっすかァァ!!」
「どーすんスか!!食事に洗濯に…やってもらうこと山ほどありますよ!!」
「まさか、自分で…」
山崎の一言に全員が押し黙った
警察なんて聞こえもいいところ、俺たちゃ所詮芋侍の集まり、そんなことはわかっている
誰もが口を開かずに、黙々と食事の後片付けが成された
「はぁー…マジでどうなんだろ、俺らの生活」
「あの…」
「俺…下手すりゃ男が作った飯食うハメになるかも…うわ…」
「あのー!」
「は、はいっ?」
女中を発掘してこい、と土方に言われ町をブラついていたとき、声が聞こえた
ようやくこの首からかけている『助けて下さい!真選組女中緊急募集』の看板が目に入ってくれたのだろうか、
声は女のものである。
声がした方を見ると、1人の少女がいる
「どうしたの?道に迷ったのかな」
「そっ、そうなんです。真選組の屯所を探してるんですけど…江戸は、初めてで…」
「じゃ、俺が案内してあげるよ。俺、真選組だから」
「あ、ありがとうございます!」
こっち、と手で教えてあげると、こくん、と頷いてついてきた
年恰好から言って、11、12ぐらいだろうか
小柄で身長も低く、顔も幼い
屯所に用、という風貌ではなかった
女中の募集に目をつけた、という訳でもなさそうだ
「差し支えなければ、だけど…何で、うちに用なの?」
「あ、えと…近藤勲に会いにきました」
「局長に?」
ますます、わからない
とうとう局長にロリの趣味でも出来たんだろうか
―――まさか、攘夷浪士
もしも、テロリストが屯所に送り込んできたスパイだったとしたら
山崎の監察の血が働いた
注意深く、少女を観察するが、のんびりとしていて何も読めない
テロリストの一派だとして、こんな少女だと手も出せないことを利用してだろうか
悶々と、膨らんでいく
「あ、ここですね」
そうこうしているうちに二人は屯所の前まで来てしまった
さぁ、どうする…と首をひねった瞬間、パトカーが角を曲がってこちらへやって来た
「山崎、何してんだテメェ」
「あ、副長。今、近藤さんに会いたいって言ってた子を案内してたところです」
「近藤さんに…?………」
「え?」
ぽろっ、と土方の手から煙草が落ちて、空白の時間が流れた
少女の方を見れば、にこっと笑っていた
「お久しぶりです、土方さん」
「…え、てことは…副長にロリの趣味がァァァ!!!」
「てめェ…殺すぞ、山崎!」
チャキ、と土方が刀に手をかけたとき、砂を踏みしめる音がした
振り返れば、沖田が立っている
「げっ。さぼろうと思ったのに土方さんがいやがらァ。何て迷惑なお人だァ」
「ぼそっと言うな聞こえてんだぞ!」
「聞こえるように言ったんでィ!!」
「えばるとこじゃねぇだろ!!」
「あ、総悟だ」
ぴた、とコンセントを抜いたように、沖田が動きを止めて、向き直った
そこにはやはり、にこ、と笑う少女が一人
「誰でィ」
「ひど…っ!ひどいよー、土方さんはすぐにわかってくれたのに…」
「……?…っ、ま…さか……?」
「…うんっ」
たたっと走り寄り、沖田に抱きつく少女
唖然としているものの、しばらくして嬉しそうに顔をほころばせると、沖田もその体を抱きしめた
「とにかく、中入りやしょう、」
「うん」
「先に近藤さんところに行ってろ。俺はこれを停めてくる」
「はい」
「ちょっ、待っ…俺も行きます!!」
自分を無視して動きだす時間の波に、山崎も慌てて飛び乗った
「っ!!!!」
「お久しぶりです」
どわぁーっと近藤の目から涙が出てきて、力強い腕で少女を抱きしめた
い、痛い…と少し呟く少女にはお構いなく、近藤は頬ずりまでしていた
「沖田さん…で、あの子誰なんですか」
「何だ、お前居たのかィ、山崎」
「さっきから居ますよォォ!」
「あ、そうだ」
やっとのことで近藤の腕から抜け出したのか、少し顔を火照らせて少女が山崎に向き直った
こうして真正面から向かい合わせになると改めて少女の顔がわかるが、
可愛い顔をしていた
「先ほどは、ご親切に道を教えてくださってありがとうございます」
「え、いや…お礼を言われるほどのことじゃあ…」
「あの…お名前、お聞かせいただいてもよろしいですか?」
「あ、山崎退です。あの…君は…」
「あ、申し遅れました。近藤勲の妹、近藤と申します」
は?
頭の中がそれでいっぱいになった
近藤さんと…この子が…
兄妹ィィィ!?
あとがき
うちの真選組の隊士たちは真面目です。
アニメでは、実際にこんなのやってねぇみたいな感じでしたが、
きっと朝は早く起きて色々やってると思います。
ただ、近藤さんは妹が起こさないと起きないし、総悟は普通に寝てるし、
あと、起きるのが無理な隊士はきっと寝てるでしょうが。
代わりに昼間しっかり鍛錬しろよ?って感じで自由な屯所だったらいいなァ…。
でも、鬼の副長が許すかな…?(笑)
この連載は、実は山崎が影の主人公です
ちょこちょこ美味しいトコをかじっていく感じでいくつもりですv
あ、ちなみに連載タイトルは全然思いつかず、原作の総悟が言っていたコトから拝借しました(笑)