そう、例えるならば君は砂糖

          どんな物もすぐに甘く、優しくしてくれる君

          ふわふわと甘いにおいで人を和ませ、癒す

          大切な、大切な君

          死なせはしない 心も、身体も

          もし俺のやっていることで、君が死ぬというのなら、俺が死のう






     真選組血風帳

          10.一敗地に塗れれば後は上に行くだけ!ポジティブにいこうぜ





          「お前、死ぬぞ」
          「余計なお世話でィ」


          アイマスクを力ずくで外してきっと睨み付ける
          こちらに背を向けて刀を見つめる土方を

          頭にいつまでも残るような金属と金属が擦れる音が響く
          …戦場だ


          「前にも言ったが、今回は本当に厳しい。
           そんな様子じゃお前は使いもんにならねぇ」
          「…ンなことは俺が決めまさァ」
          「満足に冷静な状態にもっていけないような隊士は死ぬだけだ」
          「だったら俺が歴史上ただ一人の隊士になってやらァ。時代を切り開いてみせやす」
          「総悟!」


          ぐっとつまるような息苦しさがする
          だが負けじといつもと同じようなテンションで見つめ返した

          沖田の胸倉を掴む土方は本気で怒っているようで、
          自然とあたりの空気も冷たくなっていく


          「…遊びじゃねぇんだぞ」
          「知ってやす」
          「冗談じゃねぇ。女一人のことで死なれてたまるか」
          「…もし死んだら土方さんは笑いますかィ?」


          土方の手を無理やりほどかせて沖田はにやっと笑った


          「馬鹿みてーな話じゃねぇですか。女に振られて剣に迷いが出て死ぬ。
           どうぞ笑ってくだせェ。でもな、それが出来たら本望なんでィ」
          「………」
          「剣に生き、剣に死ぬ。その武士道を俺はねじまけちまってる。
           その時点で侍失格でさァ。…が望む侍にはなれなかった…だから死ぬんです。
           もう、がむしゃらになってまで生きようとしなくていいんだ。そう考えたら結構楽なもんでさァ」
          「…総悟」
          「…けど、もし生き残れたのなら…今度こそ心から近藤さんとを守りやす」


          長い長い土方のため息が沖田の耳をうった
          呆れているのだろうか、怒っているのだろうか
          …もうそんなことは関係ない


          「やる気はあるみてぇだからな。…それを止める権利まで俺は持ち合わせちゃいねぇ。
           …行け、総悟」
          「土方に命令されて行くってのも癪ですがねィ…」


          刀を勢いよく鞘から引き抜き、沖田は歩き去った










          「お、今日は鯖の味噌漬けか?いいにおいだなぁ!」
          「お兄ちゃんたら…お腹空いたの?あとちょっとでご飯が炊けるから待ってね」
          「あぁ!久しぶりだなーと二人で食事するのは…!」
          「…そうだね」


          少し寂しそうに返事を返しながらは鯖を皿へ盛り付けた
          コトコト、と鍋が揺れ炊き立てご飯のいいにおいが部屋へ広がる

          二人だけ
          朝目を覚ましてみれば屯所には兄と自分しかいなかった
          集団で市中見回り…そんなわけがない

          局長と女を置いて、どこかを片付けに行ったのだ
          ごまかす兄にも黙って出て行ったみんなにも気をつかわせていることが申し訳なくて、
          は何も聞くことができなかった


          「はい、食べようか。お兄ちゃん」
          「おぉ!美味そうだな…!じゃ、いただきまーす!」
          「はい、どうぞ」


          こういうとき、動物的な兄貴がいれば心が安らぐ
          なんて失礼なことを考えながらはご飯を口へと運んだ

          その時、


          「三番隊損傷!二番隊投入しま…っガガッ!!」
          「!!」


          近藤の隊服のポケットからのぞいていた通信機が繋がった
          慌てふためく近藤をしばらく見つめてはゆっくりと箸を置いた


          「あ、アハハ!なんか壊れてるみたいだな、コレ!だってみんな市中見回りにさー…!」
          「お兄ちゃん…」


          とりあえず止めるために殴ってボロボロになった通信機をがそっと拾い上げた


          「私…真選組のお荷物だね」


          の目の端にはうっすらと涙が溜まっていた



          「な、何言ってるんだ、!」
          「みんなにもこうやって迷惑かけて…気を遣わせて…守られて、ぜんぜん…役に立ててない…」
          「そんなことないぞ?…」


          ふわふわと優しい手つきで頭を撫でられる
          その優しさに余計涙が零れそうだった


          「おまけに…傷つけて…私…こんな自分大きら…っ!」
          「!」


          パチン!と音が響いた
          反射的に閉じた目をゆっくりと開ければ近藤の重なった手のひらが見える
          叩いたのではなく目の前で手を叩いただけだったらしい

          おにいちゃ…と呟けばその体が引き寄せられていつの間にか近藤にがっしりと抱きしめられていた


          「そんなこと…間違っても言うんじゃない。俺の大事なに…」
          「お兄ちゃん、お兄ちゃん…っ、ごめん…なさい…!」
















          「落ち着いたか?」
          「うん…ありがと」
          「いやいや、妹を慰めるのは兄として当然の勤めだからなっ!」
          「ふふ…」


          ぐしゃぐしゃと加減を知らない兄の撫で方は何故か安心した
          おかわり!と差し出してきた兄の茶碗にご飯をよそっては笑った


          「よーしテレビでもつけるか!なっ?」
          「うん。今日の占い観なきゃね」
          「おう!」


          テレビをつけると、いつもの見慣れた占い番組はやっておらず、
          ものすごい爆音と共にアナウンサーの声が五月蝿く響いていた


          「ただいま入りました情報によりますと、一番隊が突入した棟が爆発によって全焼した模様です!
           この様子では生存者はほぼゼロという可能性が…」
          「な…!」
          「一番隊…?」


          頭が真っ白になった
          アナウンサーの声が頭でこだましていく
          一番隊…隊長…沖田総悟


          「総悟…っ」
















          再び目を覚ましたそこは真っ暗闇だった
          ズキズキと痛む頭を抑えて起き上がると、ようやく目が暗闇に慣れてくる

          「私の部屋…」

          手探りで障子を開け放つと夕日が屯所の廊下を照らしていた
          そしては気付いた

          廊下を染める赤が、夕日だけではないことを


          「総悟!」


          引きずったような血の痕が延々と続いていく廊下
          その先をたどれば明確で、ただひたすら廊下を走った


          「総悟!わたし…っ」
          「…!」
          「総悟、ひどい怪我…っ」

          出血量は半端ではない
          沖田の周りには医者を呼びに行ったのか誰も隊士はついておらず、
          ははじめてみる大量の血に戸惑いを隠せなかった

          無事だったとか、大丈夫か、なんて声はかけられない
          ただただ怖くて、恐ろしくて…涙ばかり溢れてくる


          「総…」
          「、来ないで下せェ…」
          「総悟、でも…っ」
          「来るなって言ってるんでィ!」
          「そんなの、出来るわけないでしょ!?」
          「…っ。に汚ェもん見せたくねぇんだ!来るな!」
          「汚くなんか…汚くなんかない!」


          生まれて初めてこんなに叫んだかもしれない
          抱きつこうとしたその体は既に抱きしめられていて、
          血なまぐさいにおいが辺りを包んでいた

          「置いてかないで…」


          涙と血
          汗と涙

          混ざり合ったものが畳に染みこんで、

          の痛切な声が静かな部屋に響き渡っていた
















          あとがき

          かつてない長さのような気がします…
          わ、分かりにくいかもですが一応仲直りかな、この二人は!
          当初は総悟の傷はもっと浅くて、
          屯所中に血を滴らせるなんて恐ろしいことは考えてなかったのですが…
          なんかすごくなっちゃった…
          というか医者くらい屯所に一番隊が帰ってくるまでに呼んどけ!(笑)