「ちゃんっ!デートしよう、いや、してください!」

          「でーと?」






     真選組血風帳

          11.吉か凶かなんてなぁ、ソイツの運次第じゃ!





          「うーん…」
          「雨…だねぇ…」


          しとしとと天から降ってくる雨を見ながら呟いた
          山崎は心の中で某気象予報士、良○に毒づきながら、
          は残念そうに溜息をもらしながら、である

          縁側に座る二人の間には大江戸遊園地のチケットがあった
          数日前に山崎が入手し、と行こうと約束していたのを思い出し、
          せっかく恋人になったんだから、とお日様マーク、降水確率10%の今日に初デートとして誘ったわけだが、



          「今日は山崎、1位だったのにね」
          「所詮、星占いだからねー…」


          全国の水瓶座で今日を幸せに過ごしているやつに、心の底から悪態をついてやりたい
          涙ぐみながらそう考える山崎であった


          「ねっ、じゃあ部屋デートしない?」
          「部屋デート?」
          「私、山崎の部屋ってちゃんと入ったことない!一回見てみたかったんだー」
          「えぇ!?そ、そんな…きき汚いし、臭いよ!?」
          「汚いし臭いの?」
          「いや、そうでもないと思うけど…いやでも女の子のちゃんからしてみれば…」
          「いいじゃない!行こう、行こう」
          「あっ、ちゃん!」










          そして山崎の部屋に移動して数刻後―――-
          最初の数十分は部屋のことについて話し、その次は当たり障りのない世間話を数十分
          三時のおやつも済ませて…

          「(か、会話が続かない…)」

          山崎はひとり、悶々と悩んでいた
          ちらりとを見やると、窓から外の雨の様子を楽しそうに見ている
          時折、山崎の視線に気付いてにこりと笑うのに対し、山崎が笑みを返す行為が数十回と続いていた


          「(そろそろ…だよな?)」

          何かの雑誌に触発されたのか、山崎は恋人らしい雰囲気にもっていけるタイミングを見計らっていた
          相変わらずこちらに目線をあまりくれないの横顔を見て、その可愛さに頭をかく
          こほん、と咳払いを一つもらして、の近くへ移動した


          「ちゃん…」
          「?」


          振り返ったは山崎のその真剣な目に何かを悟って不思議に思ったのか、
          小首を傾げた
          その行為が山崎の心臓を鷲掴みにし、あ、何でもありません…と告げて苦笑されてしまう


          「あの…さ…えっと…あ!沖田隊長と仲直りしたんだって?
           (って、俺は何を自ら恋敵の隊長の話なんかのたまってんだァァ!!!)」
          「…うん」
          「そ、そっかー、よかったねー(死にたい、ホント死にたい。むしろ誰か殺してください!)」
          「私、やっぱり総悟が好きなんだなって思ったよ。血だらけで、それでも私のこと心配してくれて
           やっぱり総悟は私の……大切な、幼馴染みだもん」
          「……」


          の言う「好き」にはいつもどきっとさせられた
          アイスクリームが好きだと言ったときも、何時の日だったか夕日を好きだと呟いていたときも、
          自分を好きと言ってくれたときも



          好   き



          優しい声色で、愛おしそうに話すから、山崎の耳に心地よく響く
          そして心臓をきゅっと掴んで空気に馴染んでいくのだった

          けれど、ずきりと痛みが走る



          総   悟   も   好   き



          その一言が、思い返せば思い返すほど肌がぞくりと粟だった

          盗られるかもしれない
          この素敵な音を出す女の子を

          そういう考えがよぎったと同時に山崎の手は伸びていた


          「きゃっ!」
          「ちゃん…俺…俺、ちゃんが好きだ…」


          ぎゅうっと強く抱きしめる
          優しいにおいが鼻腔をくすぐって、いっそう腕に力が入るのがわかった
          でも、もう止められない

          綺麗な唇
          いつも自分を虜にする言葉を出す
          きれいな…




          「いやっ!!!!」
          「………ちゃん?」


          あともう少しで口付けそうになったとき、鋭い声が山崎の耳を打った
          ……は恐怖に肩を震わせていた


          「…ごめん」
          「うん…」


          一気に熱が冷めていった
          走りすぎた
          恐がらせてしまった
          後悔の念が胸を強くうち、腕はだらりと力をゆるめた


          「もう帰る…」
          「うん…ちゃん、ごめん…」
          「いいよ…じゃ、またね」


          山崎の耳には何故かあの星占いの音が響いていた















          「総悟…」
          「ん、何やってんでィ。寒いだろ?早く入りな」
          「うん…」

          は部屋で絶対安静中の沖田を訪ねた
          服の間から微かに見える包帯がなんとも痛々しい


          「傷はどう?」
          「さっき薬飲みやしたからね。痛みは退いてまさァ」
          「そっか」
          「の方が大丈夫なんですかィ?」
          「え?」
          「泣きそうな目、してらァ」


          やんわりとほっぺたを撫でられて、の何かが緩んだのか、涙が零れた
          話してみなせェというように背中を撫でられ、は先程のことをぽつりぽつり話し始めたのだった
          沖田はそれを黙って聞いていた


          「恐かった…山崎が男の人みたいで…恐くて…」
          「……うん」
          「私…なんか申し訳なくって…」
          「…悪ィ」
          「総悟?」


          ぎゅうっと抱きしめられる
          包帯と消毒液のにおいがに伝わった


          「傷に障っちゃうよ」
          「いいんでィ。それよりも…謝らせて下せェ」
          「どうして?」
          「詳しくは…言えねーや」


          理由はただひとつ
 
          君が好きだ

          今も昔も
          変わらないでいてくれることに

          あの血まみれになった自分の胸にとびこんで来た日に再び認識した
          このどうしようもない想い

          止めようにも、歯車は回りすぎて修正はきかない
          涙を流す君が愛おしくて仕方ない
          他の男から奪ってやりたい 今すぐにでも どんな手を使ってでも

          けれど、


          「が困るだろうからねィ…」
          「なにが?」
          「いーや。もうちょっとこのままでいてくれませんかィ?…安心する」
          「うん、いいよ///」


          覗き見したの頬は赤かった
          微かに伝わってくる心音も少し速い

          少しは脈があると思っていたのに

          今考えてみるといまいち解せない部分がいくつか浮き彫りになってくる
          過剰な自分が考えることだが、は自分が好きだと思っていた
          けれど違った

          そこまではまだわかる

          の気持ちはのもの
          自分にもわからないものはあるだろうと

          現に今は山崎と付き合っている
          けれど…今の話を聞くとますますわからない

          山崎が本当に好きなのか…そう思ってしまうのだ

          が箱入りなことを考えて、男というものを感じたことに恐怖を抱いたとしても…
          何かが…おかしい

          そして何より、その旗色が自分に好機を知らせているように感じることをに謝りたかった
          だが、分かってほしいものだ
          狭い部屋に二人で、夜中に、抱き合って、に悟られないように必至に言葉を探す


          「こうしてると、妹みたいで安心しまさァ」
          「妹…?」


          これなら伝える前の方がマシだったな…とぼんやり考えていると、急に腕の中の温もりが消えた


          「妹なんか…ヤだっ!」


          そう言うとは勢いよく障子を閉めて行ってしまった








          「わ、わかんねぇ…」




          のその行為が沖田にますます疑問を抱かせたのは無理もない…




















          あとがき

          悶々な回でした
          久しぶりのアップです。勉強から逃走したいあまりに、
          考えていたら詰まっていたところが案外すっきり収まって形になりました
          もう次かそのまた次かが最終回です。
          今回も長いですね…長さを考慮して、分けるか分けないか…
          でもタイトル的に2つに分かれちゃってんだよなァ…