「たくさん作ったから、いっぱい食べてくださいね」
「はいィィィィ!!!!!」×無数の声
真選組血風帳
2.うお、危ね!棚から牡丹餅降ってきやがったァァ!!
わんわんわん、と犬が吠える音が聞こえる中、
真選組の某隊士AとBはようやく交通整備を終えて、岐路をたどっていた
ふんわり、と飯屋から漂う飯の匂い
今すぐにでも飯屋に駆け込みたいが、今日はこれからのことを決めるから帰ってこい、と言われた
「どーすんだろうなぁ。飯は外で食ったとしても、洗濯とか掃除は…なぁ」
「局長、絶対当番制にするつもりだぜ。…あぁ、俺家事なんてやった事ねぇのによ」
「…んなのみんなだって。つーか、このまま屯所帰ってまともな飯食える確率、どれくらいだと思う…?」
「……2%くらいじゃね?」
「2%かぁ…」
はぁ、と重いため息をつきながら屯所の前までたどり着いた
ところが、そこは二人が想像していたものとは違う
屋敷の奥に建つ台所からは煙が立ち、良い匂いがもれていた
「お、おい。どういうことだ?」
「アレだ!もしかしたら山崎さんが運良く新しい女中、見つけたのかもしんねぇ!」
「よっしゃァァァ!!!おい、行くぞっ!」
「おう!」
バタバタ、と廊下を走り、台所前へ行くとすでに同じような想いを抱いた隊士たちで人だかりが出来ていた
新しい女中はどんなだ、と誰もが口々に囁き、柱の影から女の背中を目で追っている
「おい、テメーら、危ねぇぞ」
ダァンッ!!!と銃砲が鳴り響き、隊士たちが吹き飛ばされた
警告の言葉はあまりにも遅すぎる
呻きつつ、顔を上げればバズーカを持った沖田がいた
「沖田隊長!!何するんスか!」
「お前らこそ、そんなとこで何やってんだィ。とっととその汗にまみれた面ァ洗ってきな。
の目に毒でィ」
「…?ちゃんって言うんスかぁ…!?あの子…っ」
「つか、沖田隊長!もう呼び捨て!?」
「いーち、にーい…」
「あ、洗ってきやす!!!」×無数の声
鬼畜な笑みを浮かべ死へのカウントダウンを始めた沖田に全員が慌てて去って行った
「うおーっ!!」
「す、すげぇ…!おトキさんの時より豪華だ!」
「あの人、確かに料理上手いけど、必ず冷ややっこ出すもんなァ」
「年寄りは柔らかくて美味しいもんが好物なんだよ」
「おーい、静かに静かに」
がやがや、と騒ぐ隊士たちの様子に、土方がバズーカを構えると辺りが水を打ったように静かになった
自分たちが吹っ飛ばされるのはいいが、まだ手をつけていないこの夕食を飛ばされたくないからだろうか
「、入れ」
「はい」
すぅーっと襖が開き、少女が登場した
初めて正面から見るせいか、隊士たちは誰だかわからず、首をかしげていると、
少女はそんな彼らににっこり笑いかけると真っ直ぐ近藤の元へ向かう
その後姿で誰だかすぐにわかった
「おい、あの子が…?」
「可愛いけど…えらく小せぇなぁ…」
「山崎、お前ロリの趣味が…」
「無い!!」
「うるせェェアァァ!山崎、テメ、黙れ」
「えぇ!?俺っスか!?」
「トシ、それぐらいにしてやれ」
近藤の一言で土方がチッと舌打ちをしつつも、山崎の顔からバズーカの銃口を外した
「あー…みんなに紹介する。俺の妹のだ。
これからここで暮らすことになった。お前らの家事を手伝ってくれるらしい。
お前ら、言っとくが俺の大事な妹だから汚ねェもんとか…」
「まぁじっスかァァ!!」
「よっしゃァァ!これで掃除・洗濯しなくて済むぜェェ!!」
ガチャン!!
「続き、どうぞ…」
「は元々体が弱くてな。昨年まで病を1つ患っていたんだ。
だが、元気になったこれを機に、江戸へ来てくれた。無理させるんじゃねぇぞ」
「わかりやしたァァ!!」×無数の声
「局長局長、早く食いやしょうよ!」
「そうっスよ!せっかく美味そうな食事なのに…!」
「お、そうだな。よし、じゃあいくぞ。手を合わせてー」
「手を合わせてー」×無数の声
「いただきます!」
「いただきます!」×無数の声
うおーっ、とかうめぇーっなどの叫び声が上がるのをはにこにこして見ていた
山崎は、美味い食事を食べながら、そんなを見ていた
『局長の妹って…だって、ゴリラじゃないですよ!?』
『山崎、お前俺をなんだと思っちゃってるの…?』
『はたまたま運が良かったんでィ。小せぇ頃から可愛かったぜィ』
『いや、否定しようよそこは、うん』
『ふふ…。兄上も総悟も相変わらずですね。なんだかすっごく久しぶり…五年くらい、かな?』
『そうだな…。俺たちが江戸へ行ってから会ってなかったしな』
『兄上たちの道場と同じ方も何人か真選組にいるんでしょう・・・?でも、もう覚えてないだろうなぁ・・・私のこと』
『何言ってる。昔話するときにゃ、必ずお前が出てくるぞ。あの頃に比べて女らしくなったからな、だからわからんのだろう』
『あはは、顔は結構そのまんまだけどね。でも・・・顔なんて、忘れるよね・・・』
行儀良く座るは箱入り娘の匂いがした
上品な振る舞い、話し方
そして今まであまり日の光を浴びなかったような透けるような色の肌の白さ
それらがとても近藤の妹とは思えない
『兄上やみんなのおかげで無事に病も治りました。それで、江戸へ遊びに行こうかな、って思って。
でも、前に兄上にちょっと聞いただけで道があやふやで…それで、山崎さんが案内してくれたんです』
『。山崎なんて、さん付けするような男じゃありやせん。山崎で良いですぜ』
『ちょっ、勝手に許さないでください、沖田隊長ォォ!……ま、まぁ良いですけど』
『江戸って、広いんですね。びっくりしちゃいました』
『まぁ武州は畑とか森とかばっかりだしな』
『あ、兄上…。真選組に女中が一人もいないって本当ですか?』
はっはっは、と軽快な笑いがピタリと止まる
どよーん、と負のオーラが出始めた兄たちには苦笑した
『私が、しましょうか』
『?』
『こう見えても、病が治ってから少しだけ賄のお手伝いをしてたんです。
だからお料理もお洗濯もお掃除も得意になりましたよ』
『いや、だがしかしお前病み上がりだし…』
『そうですぜ。は体弱ェんだから…』
『すぐ倒れる細い体のくせに無理言うな』
『むっ、無理なんかじゃありません。意地悪言わないで下さい、土方さん!
ね、兄上…お願いします。
私、みんなの役に立ちたいんです…っ』
お願いします!と頭を下げる少女はひどく小さく見えた
病弱で、最近まで屋敷から出たことがない、と言っていたのにどんな思いでここまで来たんだろう
ただ、兄たちに感謝がしたくて
何か少しでも恩返しがしたくて
今すぐにでもこの子の言う通りにさせてあげましょうよ!
そう言いたかった
『やって…見るか?』
『近藤さん!』
『良いじゃねぇか、ただし、無理はするんじゃないぞ?』
『はいっ!じゃ、さっそくお夕飯の準備してきますね!』
嬉しそうに駆けていく
何だか妙に嬉しくて、あの子の笑顔が見れたことが嬉しくて、
山崎はほっと安著のため息をついた
『良いんですかィ?近藤さん』
『良いさ…。俺ァがガキの頃から体が弱ェってだけで道場以外に外行くのは禁じてた。
あの頃はそれがの為だって思ってたし、俺らの稽古見て嬉しそうに笑ってるが幸せな姿なんだと思ってた。
だからこそ江戸へ来るときも置いてきたんだ。
だが、が初めて望んだことだ。 止める理由なんざ無ぇよ』
「ちゃん、おかわりいいかな?」
「はいっ。いっぱい盛りますよ、山崎さん!」
炊きたてのご飯と、上品な良い香り
ご飯のおかわりをよそう彼女の表情は、とても可愛かった
あとがき
ビバ!!真選組ッ♪
今回のお話も山崎メイン。山崎、主人公の一途を辿っています…。
ヒロインちゃんの身の上話でしたが、そこを除いて極端に言えば、やっぱり山崎ですもんね。
ご飯を食べる時の手を合わせて〜…は、小学校時代のアレです(笑)
何か近藤さんが発案してそのまんまになってそうだなーと思って。もちろん土方さんとかはやってないよ?
総悟は多分、悪ノリしててちょっとやるかもだけど。
次のお話は山崎出番無いです。でもその次はまた山崎。
山崎祭りだ〜♪