『俺が、新しい遊び教えてあげまさァ』
『ほんとっ?どんなのどんなの?』
真選組血風帳
3.泥中の蓮とはよく言ったもんで
「、何やってんですかィ。早く入りなせェ」
「思ってたよりも…綺麗なんだね」
は、沖田の部屋を訪れていた
一緒にお茶を飲もうという話になって、部屋へ来いと誘われたのだ
そして、部屋へ来てみれば
年頃の男とは思えないほど部屋は整然としていた
「ったく…、いったいどんなもんだと思ってたんですかィ?」
「だって…総悟もお年頃でしょ?あ、お邪魔しまーす」
襖をきっちり閉めて、持ってきた盆を机の上に置いた
そこにはが淹れた良い香りの茶と、団子がのせられていた
物珍しげに辺りをきょろきょろとしているに苦笑し、茶を一口啜った
畳が擦れる音がして、ふと顔を上げればが小物を仕舞う棚の前に膝立ちでいた
一心に、見つめるその先には月の光を受けて光るおはじき
放られている訳ではないのだろう
埃も被らず、綺麗に月の光を浴びている
こんなものが部屋に置いてある、と知れば真選組の隊士たちはどう思うであろうか
「これ…」
「の顔は忘れても、約束はちゃんと覚えてまさァ」
振り返れば、沖田も傍に座っていた
にっと得意げに笑う沖田に、もつられて笑う
「出来れば顔を覚えていて欲しかったけど・・・。
でも、覚えててくれたんだ…」
「との約束ですからねィ」
「っわ、私も…っ」
ごそごそ、と着物をさぐり、小さな巾着袋を出した
そっと口をほどけば、中からおはじきが二個出てきた
の手のひらに沖田の手のひらが重なる
離れた時、沖田のおはじきもの手のひらにのっていた
「おんなじ、だね」
『むー・・・』
『の負けですねィ』
『うー…、またぁ…?』
しょうがないなぁ、と呟きは目を閉じる
あやとりの糸を小さくまとめて、沖田は柔らかいの頬に軽く口付けた
『何やってんのお前らァァァ!!!』
『あ、お兄ちゃん。おかえりなさい。そうごがね、新しい遊び教えてくれたの。
あやとりっていうんだよ。すっごく面白いんだけど、バッテンが出なくなったら罰ゲームなんだ』
『勝ったほうが負けたほうにちゅー出来るんでさァ』
『そんなことしちゃ駄目ェェェ!!!禁止!!即禁止です!!』
『総悟、いらねぇ知識をに植えつけるな』
土方の登場に沖田がむっと顔をしかめる
沖田が見上げるように睨むものの、土方はその前を平気で通り、の手のひらに小さな袋をのせた
『土産だ』
『わぁ…何ですか?…これ…何?』
『おはじきだぞ。トシがお前にって言うんで、買ってきた』
『お…は…じき?』
不安げに土方を見上げる
わしわし、と強引にその頭を撫でると、中身を出した
転がるおはじきを捕まえて、適当に並べてに遊び方を教えていく
『ようは、この自分で決めたおはじきで欲しいおはじきに当てたら自分のものになるんですね。
・・・おもしろそう、やってみたいです!ひじかたさん』
『・・・そうか』
『おはじきなら俺も知ってまさァ、』
どすっと土方を肘で押し退けながら沖田がやってくる
その様子に近藤も大声で笑いながら見ていた
『そうご・・・』
『何て顔してんだィ』
『だって・・・江戸なんて遠いよ・・・。私は、ずっとここにいて一人で暮らすから、そうごのこと忘れない。
でも・・・、そうごは江戸に行って色んな人に会って、色んなことをするんだよ・・・?
私の事なんかすぐに忘れちゃうよ・・・』
泣きじゃくるの頭を撫でてぎゅっと抱きしめた
体が弱くて、外に出ることが許されなかった
それでも近藤に連れられて道場へ通っていたのは、友達である沖田や土方、そして門下生たちに会いたかったから
それらの人々が、今一斉に旅立とうとしている
新たな思いを胸に抱いて
そして自分はその留守番
『これ・・・っ、そうごにあげる!』
『・・・これァ、おはじきですかィ?』
『よっつあるから・・・ふたつは総悟が持って行って。それであとのふたつは私が持ってる。
武州で、みんなが一旗あげられるようにお祈りしてる・・・っ』
差し出されたおはじきを手に取ると、の体温で温かった
『・・・それじゃ、俺も約束しまさァ。俺はの顔は忘れても、のことは忘れねェ。
その証拠にコイツをいつも傍に持ってやす。・・・の体が早く良くなるよう、祈ってまさァ』
「総悟のお祈り、ちゃんと効いたね」
「ん?」
「だって私、今はこうして元気な姿になって、江戸に来られたもん」
「…お祈りなんて、しやしたかィ?」
「もう…それも忘れてる…」
はぁ、とため息をつくに沖田は悪びれもなく笑った
逞しくなった体
骨ばった手
低くなった声
自分が知っていたそうごは、男へと成長していた
「?」
「えっ…!?あ…、ごめん…ぼーっとしてた」
突然現実へ引き戻されて、
幼馴染の顔を見れば、向こうもどうしたのかと少し心配している
「気分、悪いですかィ?晩飯作って疲れたんじゃ…」
「う、ううんっ。そんなことないよ…っ」
何考えてたんだろ
沖田の声にびっくりして、何を考えていたのか忘れてしまった
しばらく思い出そうとしたが、思い出せず、そんなに大したことじゃなかったんだよね、と思いお茶を飲み干した
「の部屋はどうするんでしょうね」
「あ…そうだよね…」
「近藤さんのことだ。一人で寝かせる、なんてこたァしねェと思うが…」
何気なく、窓を開ける
心地よい夜風が入ってきて、湯気を揺らした
「そうだね…兄上のことだから、一緒に寝るって言いそうな顔してるもん
…って、兄上ッ!!」
沖田の部屋から通じる庭には、隠れているつもりなのか、
草むらから顔を覗かせる近藤の姿があった
「な、何してんですかッ!!!」
「い、いや…特に理由は…」
「安心しなせェ、近藤さん。は俺にとっちゃ妹みたいな奴です。
とって食ったりしやせんぜ」
にやっと笑う沖田にむ、そうか…と近藤が顔を輝かせた
訳もわからず?ばかり浮かべるは軽く置いてけぼりである
「まぁ、あんな中で育った割に、こんなに綺麗になったんだ。
ちょっとは、男心ってもんが疼きやすがねィ」
庭へ降りていくの後姿を見ながら、呟いた
あとがき
核となるお話でした
総悟メインですねー。今回はギャグ要素少なかった…
何となく、大人しかったです…。
次からは山崎の嵐です…。
総悟はちょっとしか出なくなるかな…(泣)
でもちょくちょく出すつもりです♪