「本日のラッキー星座は水瓶座のあなた
今年に入って一番の良い日になるでしょう」
真選組血風帳
9.ならぬ堪忍するが堪忍と心得よ、山崎 だからお前誰ェェ!?
「はぁ…やっと…屯所…か」
にわとりが高らかに鳴く刻限
屯所の門をくぐる男が一人
山崎退である
一週間ほど帰ってこなかった屯所
久しぶりに見るとやはり懐かしさがこみあげ、
改めて自分の居場所はここなんだと実感できた
「ちゃん、大丈夫かな…」
土方に情報を連絡した時に聞いたことだが
が体調を崩していたという情報は山崎にも入っていた
お土産のフルーツバスケットなども買ってきたのだが、あのだ
はっきりとは知らないが、
武州にいた頃患わっていた病気、というのはどうも心臓からきていたらしい
生まれつき心臓が弱いは、
過酷な中での激しい運動や重い心労には弱いということは最初に近藤に聞かされていた
「山崎!お帰りなさい…っ」
玄関から上がれば台所からが小走りでやってきた
表情は明るく、特に顔色が悪いわけでもなさそうだ
「ちゃん、もう体大丈夫なの?」
「うん!まだ少し貧血がしたりするんだけどね、
ずっと寝てるよりは多少動いた方が体にも良いだろうってお医者さんも仰ってたから」
「そっか…、でも無理はしないようにね?」
「わかってます。みんなにも何万回と言われてるもん」
柔らかい笑みを浮かべるの頭を撫でてやると、甘えたような目でこちらを見てくる
例えそれが無意識のうちの行動でも、山崎にとっては心臓に悪い目であった
(まずいな・・・)
ここ一週間、この言葉を何度胸のうちで呟いただろう
考え直しては振り切り、考え直しては振り切り、と繰り返してきたが
一向にこの想いが消え去ることはない
「ちゃん、顔色悪くなってきたみたいだよ・・・、寝てたほうがいいんじゃない?」
「うん・・・ちょっと疲れちゃった・・・」
「無理しちゃ駄目だよ。さ、俺もついていくから部屋に戻ろう」
渋るを多少強引に背中を押して誘導した
その背中は数日前見たときよりも小さく見えた
「あ、沖田隊長」
「・・・・・・おう、山崎。帰ってたのかィ?」
「はい、ついさきほど」
廊下で山崎とは沖田と出くわした
途端、の体が震える
ぎゅっと山崎の隊服の裾を握り締め、暗い面持ちでうつむいた
「・・・ちゃん?」
「、体調悪ィのかィ?」
「・・・うん」
「無理しちゃいけやせんぜ。近藤さんが大騒ぎすらァ・・・大人しく、寝てなせェよ?」
「・・・ん」
すっと沖田の手がに伸びる
びくり、と体を震わせたに沖田の手も自然と止まり、しばらくした後引っ込められた
「取って食ったりしやせんぜ?」
くす、と笑いながら言うもののその表情の辛さは状況を少ししか理解できていない山崎にもわかった
辛い顔で恐ろしいほど優しい声色で言うからなおさらなのだろう
その声にも慌てて顔を上げるが沖田は既に背中を向けて去っていくところだった
「ちゃん、沖田隊長と何があったの?」
を部屋へ連れて行き、あらかじめひいてあった布団にを寝かせながら山崎が言った
一見、野暮なことのようにも思えたが、自分の立場を考えると知っておきたい
「・・・・・・えと・・・」
表情から見ても、は困っていた
どう説明すればいいのかわからない
それが一番この状況にしっくりくる言葉だが、これでは何の説明にもならないだろう
「私、が・・・総悟を傷つけちゃったの・・・」
自然と涙が頬を伝い、は乱暴にそれを拭った
ぽつり、ぽつりと少しずつ言葉をかみ締めるように先日のことを話す
山崎は時折の頭を撫でながら黙って聞いていた
「初恋の相手がちゃん、って・・・」
「・・・うん」
愛の告白をしたも同然
そう言おうとしてとどまった
自分にとってこの状況が有利なのか、不利なのか
冷静に考えれば有利だろう
は今、沖田を傷つけたと思って沈んでいる
そこに…入れる、つまり隙間があるのだ
けれど、
一縷の理性が山崎の心を押しとどめた
自分の気持ちもよくわかっていない
果たして本当にが…
「…それで、ちゃんはどう思ったの?」
「え…」
「初恋の相手が自分だって聞いたとき」
「…あの、ね」
つい、との顎を上に上げさせれば自然と視線がこちらに合う
泣きはらしたのだろう…近くで見れば見るほど可哀想な赤い目
同時に山崎はこんなにも泣き顔が似合う子が他にいるんだろうか、と不謹慎なことを考えてしまっていた
音もなく零れていく涙
ほんのり上気した頬
「嫌、だったの…」
「…っ、い、嫌って?」
の言葉で引き戻された
慌てて手を離して何事もなかったように振舞う
こういった平静さをすぐ保てるところがこの職業のいいところだ
「なんか…説明できないけど…。私が総悟の初恋って聞いて嫌だなって思った…」
「そっか…じゃあ、ちゃんは…他に好きな人がいるのかな?」
「え///」
「あ、む、無理にとは言わないよ!別に俺が…」
「山崎」
「え?」
「私…山崎が好きだよ」
「は?え…え、えぇ!?///」
決して目線を逸らすことのないそのひたむきな瞳に偽りは感じられなかった
だがここは少しでも偽りを感じたいものである
があまりにも、周知の事実のようにケロリと言ってのけたのだから
「お、俺も…ちゃんのこと好きだよ///
はっきりと解らなかったけど…仕事でしばらく離れてから、ちゃんのことばかり考えてて…」
もごもご、と俯いて言ってしまう自分を殴り飛ばしてやりたい
もっと愛を囁く言葉とかを言いたいのに、なにぶん山崎は恋愛未経験者である
「ほんとうっ?…嬉しい……///」
「そ、そう?あ、あはは…///」
ほんのちょっぴり頬を染めるが無性に可愛くなった
想いが…通じた
(何だ…占い、当たるんだな…)
今日だけは結野アナに感謝、である
かくして山崎に初の彼女が誕生したのであった
あとがき
ほのぼのな恋愛を久しぶりに書いたような気がします…
というか、一番書いてて楽しかったのはやっぱり沖田だったりします(笑)