うららかな春の陽気を感じる日曜日の昼前
     読書にふけるカップルが一つあった
     跡部とである
     跡部はを抱きかかえるような態勢で洋書を読み、
     は跡部の邪魔にならないように少し斜めになった態勢で雑誌をめくっていた







     「ね、跡部これ見て」
     「…アーン?」
     「ほら、ここのカフェ素敵じゃない?」




     ふいにの細い指に目がいった
     それと同時に眉間に皺を寄せる跡部の表情
     そんな様子に気づいたのか心配げにが振り返った




     「跡部、どうしたの?」
     「…爪、また噛んだのか」
     「あ…っ」



     まるで隠し事がバレた子供のようにが俯いた
     低い声で睨む跡部の視線には堪えられないからだろう
     しばらく沈黙したのちに跡部のため息が静寂を破った



     「あれほど噛むなと言ったぞ。何で噛んだ」
     「何でって言われても…、癖なんだもん。仕方ないじゃない」
     「開き直りやがって」



     多少強引に手を見せるよう引っ張れば、観念したのかおず、と両手を広げた
     噛んでいないであろう爪を見ても解るようにの爪はもともと小さかった
     それを噛んで更に縮めるのだから大きさは5ミリくらいになってしまう
     ほんの少し赤くなっている指の姿は痛々しさを感じるものだった
     小さい頃から直らないその癖に幼なじみとして、恋人として心配なわけで最近は跡部も口煩く言うようになった



     「こんなになるまで噛んだら痛いだろうが」
     「…ちょっとね」
     「そんなに爪が噛みたきゃ俺のを噛め」
     「やだよ。ナルシー菌とか移りそうだし。それに爪の中って汚いんだよ」
     「それが解ってて噛むなよ…」
     「自分の爪で十分よ」



     苦笑する
     笑ってる場合か、と思いつつの指に唇を寄せた
     指が痛いのかは一瞬顔をしかめた



     「消毒、したのか?」
     「するわけないじゃん」
     「バカ、悪化したらどうすんだよ」
     「しないって。心配性だねぇ」
     「……(誰のせいだ)応急手当するぞ」
     「そんな大げさ…っ…あ、ちょ、跡部…」



     ゆっくりと、の指が跡部にくわえられた
     ざらりとした舌の感触に頬が熱くなる



     「やめっ…な、何すんのよぉ…」
     「応急手当と最初に言ったぜ?」
     「あほ…」
     「おい、絆創膏だ」



     パチンと跡部の指が鳴れば、ガラスの箱に溢れんばかりの大量の絆創膏が運ばれてきた



     「(こんな大層なものに入れられると、絆創膏も大変だね…)」



     輝くガラスに絆創膏は中々ミスマッチであった




















     絆創膏を巻かれた指を見ることさえ出来やしない
     跡部にしっかりと捕らえられた自身の指はひとつも動けなかった
     しかも当の本人、跡部は眠っている
     眠っているのにこんな力はどこから、と思っていると浅い眠りから深い眠りへ突入したのか、
     力がゆるんできた
     静かに寝息を吐く跡部を確認してゆっくりと絡められている指をほどいた



     「…っ、あは、ずれてる…」




     絆創膏なんか巻いたこともありません、今にもそう言い出しそうな手当てぶりだった
     本当は、こっそり剥がそうかと思っていた
     別に隠れて噛む訳ではないが、噛んで深爪になったのを手当て、なんて恥ずかしすぎる



     でも、こんなに不器用な愛情を目の前にすると…







     「しょうがないっか…」






     再び跡部と指を絡ませた
     広くて固い胸板に頬を寄せる







     この爪が綺麗になるまでには、癖が直っていそうだ




















     あとがき
            高校の友達の影響でしょうか?
            もともと甘夢好きだったのが…激甘好きになっちった!!
            ちなみに、管理人も爪噛むの癖です。…直りません(泣)
            ちなみにちなみに、…跡部のお家ってバンソーコーあるんでしょうか?