草木も眠る丑三つ時

     まだ灯りが燈っている部屋が一つあった

     ゆらゆらと揺れる火は襖に大きな影を映し、

     その影は殆ど一定の動きをしている


     影、沖田総悟は一人、猪口を傾けていた

     静かな静かな夜

     虫も鳴かず、風も静かで
     この世界にまるで一人取り残されたような


     「…」


     一人が無くなっただけでこんなにも世界は変わるのか


     「…


     もうあの笑顔は見れない
     もうあの涙は拭えない
     もうあの体には、温もりには、触れられない


     死んでしまった

     冷たくなって、

     死んでしまった





     最後に見たのは儚い笑顔
     まさしく死の淵に立った病人の顔

     覚悟はしていた、のに


     「好きでさァ…


     そっと白い布を取れば、綺麗な死に顔
     頬を撫でていると、涙が伝う
     その涙でさえ、彼女のものではない


     「愛してたんでィ…」


     猪口を床に叩き割って、彼女の体を抱きしめる

     とうに温もりなど消え果た華奢なその身体を


     声を出して泣く沖田の姿を
     障子の隙間から月だけが覗いていた