誕生日って結局は本人以外にとってはただの平日
朝のHRまでの間
3Zの教室は今日も騒がしい
毎度のことながら必死にお妙にアタックする近藤の叫び声や、
キャサリンとつかみ合う神楽の声
そして今日も今日とてアルバイト雑誌を捲りながらぶつぶつ呟く長谷川の声など
教室には多種多様の声が飛び交っている
そんな中を健康サンダル特有の音を発しながら担任の坂田銀八が入ってきた
今日もダルそうな目をしての登場である
「おーいお前ら、HRするぞー」
こんな風貌でも一応教師としてはみなされているらしく、生徒たちはバラバラと席についた
近藤の号令で全員起立、礼をして席につくと銀八はいつものテンションで言った
「えーと…今日の朝のHRは一日遅れだが願掛け」
全くもってワケがわからない
きょとん、とする生徒たちに銀八は分かりやすく説明するためにか紙を配り始めた
「短冊配るからなー。各自、帰りのHRにまで書いとけ。
よし、以上!号令!」
あまりにもあっさりとした連絡
それでも銀八が教室を出て行く頃には皆状況を察したのか各々喋り始めた
そして窓際の後ろから二番目というベストポジションに位置する沖田もその一人であった
だが、沖田の場合話しかける相手が悪い…というか全く聞いてくれないので
まるで独り言のようであった
「さんは何を書くんで?」
、と呼ばれたのは沖田の後ろに座る女子生徒である
個性派揃いの3Zにおいてはあまり目立たない存在だが、よくよく見れば美人顔
成績は常に優秀で、クラス内においては常にトップの称号を飾っている
「別に…興味無いし」
「アララ…そいつァもったいないねィ。
じゃ、どうでしょう?俺がさんの願い事考えるっつーのは」
本をめくっていたの手がピタリと止まった
聞いているのかどうかは定かでないが、僅かな反応をみせたことに沖田は機嫌を良くし、続ける
「実は今日、俺の誕生日でしてねィ」
「…そう、おめでとう」
「だから今日が沖田くんにとって幸せな日になりますよーにって。
心から願いをこめてお願いしまさァ」
「………心からは無理だけど、」
筆箱からシャーペンを取り出そうとしたとき、沖田の手がその手を押さえた
いつになく真剣な表情で
「織姫と彦星に失礼でさァ…本気じゃねーなら…やめて下せェ」
けれどその表情はいやに悲しそうで
いつもの自信に満ち溢れた沖田ではなかった
放課後
は図書室の閉館時間まで本を読むことを粘り続け、
閉館時間とともにその場を後にした
廊下で借りこんだ本を鞄へ仕舞おうと鞄を開けば、
中から丸まってくしゃくしゃになった紙が出てくる
あの、短冊だった
「ちょっとぐらい…祝ってあげればよかったかな…」
好きな子にはつい意地悪してしまう
それと同じようなもので、の場合冷たくしてしまう
「今からでも…」
外を見れば辺りは雲が出てきて薄暗い
夜が帳をおろすための暗さではなくて、天気は下り坂へと向かっているようだった
慌てて階段を駆け上がっていった
人気のない廊下を走りすぎて、ようやく3Zの教室に着く
「…っ!」
「やっぱり、来てくれると思ってやした」
織姫と彦星は会えそうにないけれど、
私と沖田くんはようやく正面から向き合って会えたような気が…した
(俺もアンタと同じ人種なんでィ。好きな子はいじめてーんです)
(…そう///)