あなたと一緒にいたいです

     傍で、あなたが苦しい時には声をかけてあげられる

     そんな存在になりたいです


     昨日書いたこととまるで同じ
     あの子に渡された薄ピンク色の短冊

     けれど、そんな私の願いは相手の苦笑と共に消えていった


     「悪ィな…」


     血に汚れて、こっちの体まで腐っていくんじゃないだろうか、という臭いに満ちている
     確かにそんな場所で愛の告白もクソもないだろう

     私は剣についた血を見つめながら小さく頷いた
     判った、と了承の意味をこめて

     「俺ァ…一生、彼女のことしか想えやせん」

     今こそ、私のこの体も朽ち果ててしまえばいい







 そんなちっぽけな願いだけど








     「自棄酒…」

     もう深夜を回った時計の針を見つめながら呟いた
     玉砕覚悟で言ったとしても、失恋の穴は中々塞がってくれない
     そんな穴に沁みるのか、いつもの酒が苦く感じた

     「…もう空か」

     空いた酒瓶を持って立ち上がる
     本当はもっと呑みたいところだが、空になったからには仕方ない
     台所へ向かおうとすれば、思わぬものに遭遇してしまった

     沖田隊長

     庭に面した廊下で、座り、月を眺めているその姿は綺麗だ
     寝汗をかいたのか、額にはうっすらと汗が滲んでいて、
     夜着の前は肌蹴ていた

     行こうか、行くまいか

     小さな葛藤が胸の中でとぐろを巻く
     けれど、行ったとしてどうすれば…?

     庭で風にのって揺れる笹と短冊は月に照らされて浮かび上がっている
     しゃらしゃらという葉の音が落ち着くようで落ち着かない
     気を抜けば手に握った酒瓶を落としてしまいそうで、しばし立ちすくんでいた
     すると、

     「総悟…?」

     少女の声が障子の中から聞こえる
     そして障子がゆっくりと開いて、あの子が出てきた

     「悪ィ…起こしちまったかィ?」
     「ううん…どうしたの?」
     「いや…」


     苦笑いを浮かべながらあの子を抱き寄せる隊長
     あの子の表情はこちらからは後ろ向きになっていてわからない


     「総悟…話して?」
     「…には敵わねーや」

     ほうっと息を吐いた隊長を見てなんだか自分も安心してしまった
     音を立てないよう細心の注意を払いながら私もその場へ座り込む


     「時々…自分がひどく汚れてる存在のような気がするんでさァ」


     胸が詰まった
     同じだ
     私も同じ思いにかられたことがある
     特にこんな、


     「人を斬った日には…」


     その隊長の言葉を最後に、辺りは静まり返った
     しばらくしてすすり泣くような音が響く

     「何で泣くんでィ…」

     そういう隊長の声も涙声で、
     何も言葉を発さずに泣くあの子を見て腹が立った

     何か言ってあげればいいのに
     何か…  私なら、
     私なら…隊長に声をかけてあげられる…


     「そんなこと…言わないで…」


     「総悟が生まれてきてくれて私はすごく嬉しいし、感謝してるよ…」


     涙声で
     小さくて、儚い声で

     それでも確かに
     確実に、

     その透き通った声が隊長の心に沁み込んでいくのを感じた


     ふと隊長と目が合って、
     隊長は私に泣き顔を見せたくないのか強引に涙を拭いて
     またあのにやりとした笑みを浮かべた


     お幸せに


     心から呟いた言葉


     ねぇ、隊長

     隊長の心の片隅でもいいから、

     私という女がいたことを覚えていてね…