男として

     自分の愛しい妻が待つ家への道をたどるときほど幸せな瞬間はないだろう
     ましてや新婚
     ましてや恋愛結婚

     武装警察という安定した仕事(危ないけど)
     優しくて気の回る奥さん
     そしてその奥さんも今では身二つとなっている

     「けどねィ…」

     亭主、沖田には一つ大きな悩みがあった


     確 か に







     「はー…食った…」
     「ふふ、美味しかった?今日もお仕事お疲れ様。
      肩でも揉もうか?」
     「そんなんいいから、はどうだったんでィ、今日一日」

     黒くて艶やかな髪の毛をといてやりながら沖田は笑いかける
     仕事場である屯所では決して見せない柔らかな表情
     そして優しい声色で

     「うん…あのね、今日は良いお知らせ!
      実は今日…赤ちゃんが初めてお腹蹴ったの!」
     「へぇ…そいつァよかったですねィ。
      俺もその場に居りゃあよかったな…」
     「あ、でも待って。割と頻繁に蹴るから…あ、ほら!」

     言われて慌てて手を膨らんだお腹にやるが、時既に遅し
     赤ちゃんの目覚しい成長振ぶりはあっという間に終わってしまっていた

     「んー……」
     「あはは…でも辛抱して待ってればすぐよ?」
     「じゃ…ちょっと失礼しやすぜ」
     「うん…///」

     はドラマで見たのと同じだ…とほんのり頬を染めていた
     沖田の耳がのお腹に当てられ、頭は膝枕
     目が合えばにっと笑いかけられ自分も笑いかけた時、

     「「「あっ」」」

     二つ、否三つの声が重なる…

     「お、おおおお兄ちゃん!!!」
     「近藤さん…まーた来たんですかィ?」

     の兄、近藤勲だった


     「何だよその嫌そうな態度はァァ!!
      言っとくけど俺まだ完全に許したわけじゃないからね!?
      あっ…蹴った…///」
     「ンなこと言って俺との子に生まれる前からメロメロじゃねーですかィ」
     「ちょっ違うよコレ!?違うからね…!」
     「へーへー。じゃ、妹さんベッドに運ぶんで。
      とっとと、帰って下…せェ!」

     げしっと近藤を足で蹴り追い出すと、外の方で近藤の嘆きが聞こえた
     それも無視して沖田は満足げに笑う

     「さ、ゴリラも追い出したし…もうちょっと聞かせてくだせェ」
     「…うん///」






     出産前の愛おしい瞬間を、
     沖田夫妻は甘い時間と一緒に味わっていた