気になる子がいる
     毎週木曜日の放課後になると、体育館にやってくる女の子
     髪は肩についているくらいで、たまにリボンでくくっている

     校内で見かけたことはなくて、見られるのはその時だけ
     だから勿論、学年はおろか名前も知らない

     まっすぐな瞳で背筋をピンと伸ばした彼女はいかにも真面目そうで、
     自分とは住む世界が違うように見えた





  常 連 客










     彼女の視線の先は決まってバスケ部
     うちのバスケ部は結構強く、
     厳しい練習をしているせいかインターハイには毎年いっている
     体育館は広いので、そのバスケ部の練習の横に
     剣道部は紛いさせてもらっていた

     今日はなにやらノートにメモっている様子
     頬が紅潮した様子で一生懸命書いている彼女は遠目から見ても可愛い

     何をしてるんだろう…といつも思うが声をかけたことはなかった
     大方、察しがついていたから

     どうせバスケ部に好きなやつでもいるんだろう
     あの様子からしてもそんな気がする

     「何見てんだ?」

     なんてぼんやりと考えていると、気持ち悪ィ土方の野郎が話しかけてきやがった
     何でもない、とすぐに視線をそらすが見破られてしまい、彼女を指差す土方
     オイ、テメェみてぇな汚らわしい奴が指差すんじゃねぇ

     「放送部のさんだろ?」
     「…っ、し、知ってんですかィ!?土方さん!」
     「知ってるも何も…アレだろ、お昼の放送もやってるし…」
     「…昼の放送?」

     そういえば、
     昼休みには決まって音楽が流れているのだが
     最近では放送部が二人交代で音楽の紹介などをしていた…ような気がする

     何しろ昼休みっつったら、
     さっさと飯食って自主練しにいく絶好のチャンスだったから
     流れているものなんて殆ど聞いていなかった

     格好悪ィ…
     毎日必死になってどこのクラスか探して、
     廊下では擦れ違う女子まで念入りにチェックしてたってのに、
     答えはすぐ傍にあったってのに…

     「ありゃあバスケ部の取材してんだな…」
     「取材…インターハイのですかィ?」
     「そうだろ。
      ま、うちももうすぐインターハイだからな、来週あたり来んじゃねぇか?」
     「……まじでか」


     頬のゆるみを正直隠せなかった
     あの視線が自分に向いているときのことを考えると

     来週になるまであと3日
     彼女がこちらを向いて入ってきたときには何と言おう

     ずっと探してたなんてこっぱずかしい言葉は言えやしねぇけど
     せめて昼の放送お疲れ様、ぐらいはいえるかもしれない

     この初恋のような初心に、
     嘘だけはつきたくないから