「only you」






「まったくだらしねぇなぁ、HELL DRAGONも出来ねぇなんてな」
「普通の人間は出来ませんって…」

呆れるを政宗が横目で見ながら言った
は朝から鍛錬していたせいで疲れたのか、ざす、と剣を地面に突き刺した。

「お前、手首異常に細いな」

がっと突然の手首を掴むと自然との頬に赤く染まる
だが政宗はそんなことを気にしない(というか気付いてない)

「ほ、放っておいて下さい!生まれつきなんです!」
ばっと手を振りほどくとはきっと政宗を見上げた

顔を真っ赤にして政宗を睨むを政宗は口角を上げて見下ろしている
やがての口からぽんぽん出てくる言葉の数々は
途中から政宗の耳には入らない(つまりは聞いてない)

「今日は、人が少ねぇな」
「政宗様!聞いてますか!?」

子犬がキャンキャンと鳴くように文句を言う
政宗はそれを全く聞く気がないようだ

「大体、鍛錬所に人が来ないのは、政宗様のせいでしょう!?」
「何だ、それは。聞き捨てならねぇな」

やっとこちらを向いてくれた政宗に負けじとは続ける

「政宗様が、手綱を腰にくくりつけて乗るから、
皆マネして落馬して大怪我してるんですよ?」
「Ha!あんなniceでcoolな技が出来るのは俺だけだっつーの」

腕を組んでいる政宗をは溜め息をつきながら見た
政宗の瞳はいつも真っ直ぐで、天下を見つめている
彼の瞳に迷いなどない
ただ自分が信じた道を歩むだけだから
そんな政宗に近づきたいと思ったの憧れの人だから

そして念願の政宗の護衛武将になったかと思えば、
子犬みたいだ、と馬鹿にされ
横を走るな、と邪魔者扱いされ
苦労と疲労にまみれた毎日

それでも、戦が終わった時に誉めてくれる政宗が好きで
そのままずるずると政宗の護衛武将として仕えてきて、1年になる

は、見られている気がした
ふと顔を上げると政宗がこちらを見ている

「ま…」
「黙れ」

政宗はゆっくりとの髪を撫で、の耳元に唇を近づけた

「誰か見てる」

今、この鍛錬所には政宗との2人しかいない
敵の間者、もしくは政宗を亡きものにしようとしている暗殺者かもしれない
音をたてないように懐の短剣に手をかけようとすると政宗がそれを制した

「俺が命令するまで、下手に動くな。相手に悟られるな」
「は…はい…。」

小声で話すと政宗を切り裂くように低い男の声が響いた

「伊達政宗!覚悟ぉ!!」
「おいでなすったか」

政宗は六爪流を掴んで、相手の攻撃を受け止めた
ぶんと力をこめて政宗が刀を振るうと相手が吹き飛んだ

「やれ、
「御意!」

ばっと先ほど地面に突き刺した愛剣を抜き取るとは男に向かって走り出した
態勢を立て直していた男に飛びかかる
男は不意をつかれてに押し倒された

「誰の命令で我が主の命を狙う!答えよ!!」

先ほどとはうってかわった鬼気とした表情に男は負けじと返した

「お前などに、我が主の名は名乗れない!」
「何!?」

剣を男の喉元に移動させ、は続けた

「答えろ!答えなければ…」
「さっさと殺すが良い。俺は死など恐れない」

目が完璧に死んでいる男を見ては相手の武器を奪い
自分の剣を鞘に戻して懐から縄を取り出した
ぎゅ、と男の腕を縛るとは縄の端を持って政宗に向き直った

「この男は獄舎に入れる必要がありそうです。
連れて行きますね」

の言葉に政宗は頷いた
政宗に一礼しては立ち去ろうとした時

「待て」

政宗に呼ばれた

「何ですか?」
「俺が連れて行く。お前はもう休め」
「そんな、政宗様にこのような雑用をおしつけるなんて!」
「雑用ってお前、その男傷ついてるぞ…」

政宗はの手から縄を奪うとに背を向けて言った

「こいつには、言っておきたいことがあるんだよ」

ぶんぶんと手を振る政宗
それは下がれ、という意味だ

「失礼します」

たっと立ち去ったを確認して政宗は男の胸倉を掴んだ

「お前、よくもあいつの半径10cm以内に近づいてくれたな…」
「はぁ!?あれはあの娘が勝手に…」
「知ったことかよ!Ha!さっさと来い!」

―――政宗の理不尽な怒りに付き合わされた男、哀れなり










「政宗様って、本っ当につかめない方だわ…」
殿?」
「あ、小十郎様!」
ふと後ろを振り向くとそこには片倉小十郎が立っていた

「どうかしましたか?また政宗様にでも何かされましたか?」

にこり、と優しく微笑む小十郎には嬉しそうに手を振った

「い、いえ!全然何も!」
「そうですか、それは良かったです」

はふと小十郎を見た
女官たちの間で政宗とほぼ同じ位の人気を集めている片倉小十郎
困っている人がいれば助け、極上の微笑みで迎えてくれるらしい
政宗にしょっちゅうからかわれているも時たま小十郎と話すこともあった

「あぁ!!」
殿?如何なされました?」
「剣を鍛錬所に忘れました…」

神妙な顔つきで話すを見て、小十郎は堪えきれなかったらしく、笑い出した

「なっ、わ、笑わないで下さい/////」
「も、申し訳ありません…」
「わ、私取ってきます!」
「でも、雨が降り出しましたよ?」
「え?」

笑いを堪えながら外を指差した小十郎
外は大粒の雨が降っていた

「今日は止みそうにありませんね。明日取りに行かれては如何ですか?」
「そうします…」

は愛剣を鍛錬所に置いてきたことに後ろ髪をひかれる思いでその日を過ごした


次の日、無事に剣を腰に差すといつも通り政宗の部屋の戸を叩いた

「あぁ…」

入って良いということだろうか。
いつもなら

「さっさと来い」

と言うのに

「失礼します」

そろそろ入ると、政宗は執務室に居なかった
不思議に思い、奥の部屋へ進むと政宗が寝台に横たわっていた

「ま、政宗様!?」
「よう。」

政宗のこんな姿を見るのはもう二度とないだろう
寝台で鼻をすすりながらこちらを見つめる政宗
どうやら風邪をひいたらしい

「政宗様!大丈夫ですか?」
「あー…。寝てたら治るだろ」
「そんな滅茶苦茶な!お薬飲みました?」
「いや、飲んでねぇ」

枕元に置いてある薬に目をつけ、は中身を出して薬の準備を始めた

「このお粥は?」
「女官が置いてった」
「食べました?」
「俺は小十郎の握り飯以外は食わん」
「んなアホな!!」

は意を決したように腕まくりをして寝台の横の椅子に腰掛けた

「食べてください!」
「無理」
「無理じゃないです」
「食う気がしねぇ」
「ホントですか?」
「ホントといえばホントだし、ホントじゃねえといえばホントじゃねえな」

にやにやと笑う政宗はからかう気満々という雰囲気を醸し出している
はぁ、と溜め息をついているに政宗は起き上がった

「俺が願いを聞いてやるんだから、お前も俺の願いを聞けよ」
「いや、私は別にいいんですけどね。
食べないで苦しむのは政宗様なんですから」

顔を上げたに政宗はゆっくりと手を伸ばした
政宗の手がの頬に触れるとは真っ赤になった

政宗の親指がの唇に触れるとはいてもたってもいられなくなり
目を完璧に泳がせていた

「ここを、俺にくれるなら。食ってやってもいいがな」
「そんな滅茶苦茶な…/////////」
「駄目か?」
「断ったらどうなるんですか…」
「賢いお前は想像つくだろ?」
「………////////////」

ゆっくりと唇が重なり、政宗は呟いた

「お前には、俺が必要だ」
「あはは…/////////」
「俺にも、お前が必要だ」
「え…」










「You see?」
「あ…I see.//////////」
「That's good」