「へばるなよ、」
「・・・そっちこそ!」
もう何人目か分からない
足元はふらつくし、目は少しずつ霞んできた
それでも、次々と襲い掛かってくる敵を見る限り休むことは許されない
「これ、いつ終わるのよ・・・!」
「さあな、向こうが諦めるまでだろっ!」
背中越しに伝わる衝撃
佐助は自身の獲物で相手を次々と切っていく
それに負けじとも愛刀を振り上げた
休むことは許されない
負けることは許されない
そんな極限状態の中でも、一つだけ温かな光があった
それは、背中から伝わる彼の体温
金属の匂いと木が焼ける匂いが鼻をついた
積み重なるようにして群れていた敵がようやくいなくなった
は安著のため息をもらし、自身から少しずつ力が抜けていくのを感じた
怪我の治療法
先ほどの、疲労が嘘のようだった
目を開けるとそこは見慣れた天井
城にある一室、の部屋の天井だった
ゆっくりと身を起こすと、それと共に意識も少しずつ戻ってきた
ずき、と右腕に痛みが走り、寝台から起き上がって見ると右腕からは血が流れていた
おそらく先ほどの戦いでしくじった傷だろう
「運んでおいてくれるなら、手当てもしておいてくれればいいのに・・・」
「仕方ないだろ」
誰もいないと思っていた部屋にもう一つの声
これまでにこういうことは何度もあったので、別段驚くことではなかった
背後に少し気配を感じて振り向くと、窓辺に佐助が座っていた
月明かりに照らされた佐助の顔は、整った顔立ちをさらに引き立てていた
「お館様のところに行ってたの?」
「そ。報告しないと武田の旦那、不機嫌になるからな」
は佐助の隣に腰掛けた
差し出された包帯を受け取り、器用に右腕に巻きつけていく
白い包帯に赤い血がついていく
それを冷めた目で見つめながら上へ上へと重ねて包帯をきつく巻いた
「大丈夫か?」
「当たり前。これでも、武士のはしくれですから!」
床についていない足をぶらぶらとさせながら顔をあげると
そこには口角をあげた佐助の顔があった
それは、自分と一緒に居る時にしか見せてくれない笑顔
一見、意地悪そうに見えるけれど、この表情がは好きだった
「佐助も怪我してるじゃない・・・、ちゃんと手当てした?」
「あー・・・、そういやぁしてないな。、してくれよ」
「わ、私が・・・?」
はっきり言って面倒くさい、と断りたかったけれどそれは叶いそうになかった
既に佐助はどこから出したのか、消毒薬と新しい包帯を差し出していたからだ
ため息をついてそれを受け取るとは佐助に向き直った
開き直ったに気づかれないよう吐息だけで小さく笑うと、
痛みも少しずつ慣れてきた右足を見せた
と佐助は夜に会うとき松明をつけることはなかった
松明をつければ確かに明るいけれど、月が溢れ出している青白い光が好きだったから
月明かりを頼りには消毒薬を佐助の足に塗りたくった
「いっ!・・・お前なぁ、もちっと優しく出来ないのか?」
「何言ってるの。痛くない手当てなんてない。それに、薬が効いてる証拠よ」
不器用なせいか、わざとなのか、容赦なく消毒を続ける
ぼんやりとその表情を見つめながら、佐助は良いコトを思いついた
「ほら、終わったわよ」
「・・・あぁ。なぁ、正しい消毒の仕方教えてやろっか?」
「・・・何よ」
思った通りの反応
自分を訝しげに見つめながらも、瞳の奥には期待という光が宿っている
幼き頃より一緒にいた佐助と
自分のことは相手が一番知っているのかもしれない
手を伸ばして、の頬に触れた
そこから伝わる人肌の温かさ
女特有の柔らかい感触に、愛しい人の感触に、少しずつ胸が高鳴っていくのを感じながら
佐助の顔と自分の顔の距離が近くなっていく
腰に回された腕が逃げることを阻んでいて
は固く目を瞑った
神経が唇に意識していた時、触れられたのは思ってもいない頬だった
最初は佐助のものと思われる柔らかい唇が触れ
やがてざらりとした感触がして、肩が震えた
しばらくして、頬から生暖かい感触が逃れ、目を開けると佐助がこちらを見ていた
唇を見て気づいた、自分は頬も怪我をしていたのだと
「気づかなかったのか?」
「かすり傷でしょ」
「・・・女の顔なんだから、少しは気にしろよ」
「佐助がいるからいいでしょ」
お礼とばかりに佐助の唇に自身の唇を重ねた
鉄の味がした
「まぁ、近いうちにをもらうらいいか」
「・・・ありがと///」
腕を首に回しただけで、佐助は再度唇を重ねてきた
そこからも、くっついている肌からも伝わる体温
戦で感じる佐助の体温
それも好きだけれど、二人でこうして体温を供給しているほうが、
遥かに幸せの色を感じられるような気がした
☆あとがき
環琥宇鈴華さまのみお持ち帰りOKです!
大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした…!(汗)
もっと早くに書こうと思って早二ヶ月近く…、すみません!
人様に捧げるのは下手なの書けないから緊張しますなァ…。
まぁ頑張ってもあんまり良いのが書けないのが現実ですが…(泣)
これでも気に入っていただければ幸いです。
キリリク、ありがとうございましたv