朝は毎日大忙し
朝ごはんは適当に流し込んで歯も磨いて髪を結う
こういう時には長い髪なんかにしなきゃよかったと後悔したり
けれど、ぼさぼさな頭で外へ出て行く訳にはいかない
玄関へ行けば、彼がいる
私の幼馴染、沖田総悟
素直な良い子の作り方.1
「遅いぜィ」
「ごめんって」
「あーぁ、手がこんなに冷たくなっちまったぜィ」
「それは総悟が手袋しないからでしょ?」
「俺は手袋は嫌いなんでィ」
「…………」
嫌味なヤツだ
私がクリスマスに手袋をあげたことをわかっていてやっているのだろうか
「せめて後10分早く起きたらどうなんでィ?」
「仕方ないでしょ…私、低体温動物なんだもん…」
ポケットを探ると飴玉を1つ発見した
ビリリと包装を破って口の中に1つ
甘い苺味が口に広がった
(総悟、なんか機嫌良い…?)
飴を舐めながら隣に歩く幼馴染の横顔を見つめる
冬の朝の冷たく澄んだ空気の中で見るその顔は今日も整っている
悔しくはあるが、好きなのだ
沖田総悟という男が
けれど、この気持ちを伝えたことはない
伝えようと思ったこともない
幼馴染で腐れ縁
この関係が楽で、居心地良かったから
「ご機嫌だね」
だから、総悟を観察するのにはちょっと自信がある
何気ない仕草や言葉の端々で大体の機嫌の目安は解る
そんな私の得意技もこの関係があればこそ
「そう見えるのかィ?」
「うん。何か良いコトあった?」
「…そうだねィ。正確にはこれからありまさァ」
「……、何?」
「秘密でィ」
得意げに話していたかと思えばぷいっと視線を逸らす
これ以上は突っ込まないほうがいい
何となく私の本能が悟った
「遅くなっちゃった…」
現在私は生徒会に属している
放課後は資料の整理やら会議やらで大忙し
外が真っ暗になるのも当たり前なことで、帰りは遅い
女の子がそんな時間に一人で帰るのは無用心だ、と顧問も言うが私の場合は問題ない
総悟がいるのだ
家が隣同士で幼馴染だからこそこんな融通が利く
行きも帰りも一緒に居られるのは私としては嬉しかったが、総悟はどうだろう
「あぶなっ、もうちょっとで階段降りすぎるところだった…」
慌てて数段降りすぎた階段を昇って廊下に出る
3A、3B、3Cと教室は横に長く続いている
私は3Zの教室前に人影があるのを見た
同じクラスの志村新八くんだ
「新八くん、そこで何してるの?」
「あ、さん。しーッ、ちょっと、今…」
「?」
ひそひそ声で話されるから私もついつい気遣ってしまう
廊下に響く自分の微かな足音でさえ忍ばせてしまった
「なに…」
「ほら、あれ。怪しいと思いません…?」
新八くんが指差したのは薄く開かれた教室の扉
正しくは、その隙間から見える教室の風景だった
視界が狭くてよくは見えないが、生徒が男子、女子と合わせて七人集まっている
空は茜色に染まっているというのに電気も点いていない
何とも不気味な教室の中から不気味な笑い声が響いていた
「ね?だからこう…後ろから見たらついつい弄りたくなっちゃうわけよ…」
「わかるー…」
「お前と意見が合うなんざ珍しいことですが…同意見ですぜィ」
「あ、そだ。例の件どうするよ?」
「……俺は別に構いやせんぜィ」
「銀八も別に構わねーってよ」
「つか、高杉先生も顧問したいって…顧問二人も居ていいのかな?」
「いいじゃん!なんか強そう!」
「よし、じゃあSOS同好会の結成をここに宣言するっ!」
「待ちなァ…それじゃあお前が団長だっていうのかィ?」
総悟の声にぎょっとした
、と呼ばれたその子は私の友達だ
私たちのグループの中でもドS筆頭の彼女、あだ名は女王
「何か不満でも?サディスティック星からやってきた王子サマ」
「………お前にそう言われるだけで何か無性に腹が立ちまさァ」
「不満があるなら言えばいいのに?」
「なら言わせてもらわァ。団長は…海野でィ」
「はっ!?」
またまた脱力する
海さんまでいるのか…、と半ば呆れた
海野、あだ名は海さん。名づけ親は私
彼女も私の友達で、優しくて面白い
「あー…海さん、ねェ…」
「ちょっ、も止めようよ!ねっ!?」
「いいや、団長は海野郎でィ」
「いや何、その海大好きっ子みたいな新しいあだ名!別に海が好きでも何でもないからね!」
「じゃ、とりあえず団長は海さん!ボスは私で決定〜っ。よし、解散!」
「待ちやがれィ!まだ話は終わってませんぜ…」
果たして険悪なムード、がしっくりくるのだろうかこの状況は
ゆっくり振り返れば新八くんも私と同じような面持ちでいた
「なんか…新しい同好会結成しちゃったみたいだね…」
「ですね…というかSOS同好会って…。
聞こえはいいものの絶対に良いものであるようには思えませんよね…」
「うん…というか…○宮ハ○ヒのパクリだね…」
はぁ、と二つのため息が重なった
今朝方やけに総悟が機嫌が良かったのはこのせいか
「とにかく…集まってるメンツからして悪いものであることは確かだわ
というか、海さんは完璧巻き込まれてるって感じだし」
「そうですね…。彼女は良い人ですから…」
「…新八くん、銀八先生にそれとなく聞いてみてくれない?
私、高杉先生の方に当たるから」
「は、はいっ。けど、僕らが勝手に動いて大丈夫なのかな…?」
「このまま放っておいたら何されるかわかんないもの。
じゃ、そっちの首尾はよろしくね!」
「あ、さんっ…」
とりあえず、何かとっかかりを捜さなきゃ
あの総悟の目は…なんか色んな意味でヤバい
それだけは絶対に言える
「高杉先生、今日はちゃんと先生として居てよ…!」
痛切に叫びながら階段を降りていった
アトガキ
最初に言っときます(何)
この連載、1話ずつ雰囲気変わる!
それだけは今ここで断言しておく!
後半にいくごとに交じっていく感じだから…2話を読んでアレ?違くね?とか思わないでね!
あくまでも沖田と高杉に揺れる主人公、ですから(笑)
SOSの秘密は近いうちに…というかそれがメインだしね、そもそも(笑)