朝のこの時間が好き
                布団から出るのは春夏秋冬問わず苦手だけど

                ご飯はそこそこに、いそいそと洗面所へ向かう
                今日はどんな髪型にしようか、とか鏡と睨めっこしてから自分の部屋へ
                鞄を手に取って忘れ物がないか確認してからそーっとカーテンの隙間から外を覗く

                総悟がいる
                ぼーっと空を見上げたり、ぱくと口が動いたり(多分、私の悪口なんだろうな)
                そんな様子にくすりと笑みを零す

                あぁ、幸せ
                総悟が好きって実感できるこのときが


                けれど私は嘘つき
                すぐにこんな自分を裏切ってしまう、嘘つき





      素直な良い子の作り方.3





                「、早くしないと総悟くん可哀想でしょ?
                 …あら、今日は随分と気合入って…パーティでも行くの?」
                「んな訳ないでしょ。別に…ちょっとしたイメチェン」
                「は私に似て可愛いんだから、拉致られないようにね?」
                「そんな縁起でもない…、行ってきます」
                「はい、行ってらっしゃい」


                ギィっと玄関を開くと総悟の背中が見えた


                「いつまで待たせれば…!」


                じっと見てくる総悟の視線が痛い
                黙りこくられては良いのか悪いのかわかりゃしない


                「…巻いてみた」


                ぶっきらぼうにそう言って、玄関から出た
                行こう?と振り返れば総悟はまだ固まっている


                「…髪」
                「いつまで言ってんの。早く行こうよ」


                本当は苦労したのだ
                昨日の晩からあれやこれや準備して
                けど、その手間を言うのは何となく嫌だし、何よりこの状況が恥ずかしいことこの上ない

                急かすようにくいっと総悟の鞄を引っ張ると少しずつ歩き出した
                ようやく歩き出してくれたものの、殆ど私が引きずっているような状況だ


                「…それ、取れねぇのか?」

                学校前の交差点でぼそりと総悟が呟いた
                今までだんまりだったくせに、突然話しかけたりと今日の総悟は忙しない


                「と、取れないよ!」
                「へェ…くるくる」


                すいっと伸びた総悟の指が私の髪を絡めとった
                くるくる、と指でいじるその姿に何となく気恥ずかしくなって、頬が熱くなっていくのを感じた
                そんな私に気づいたのか、総悟の指がすばやく離れていく


                「んな顔すんな」
                「…は?」
                「こっからなら独りで行けるだろィ?先行ってまさァ」
                「ちょっ…信号赤!」
                「平気でィ」


                総悟は車がはけたのをたいみんぐよく見計らって、さっさと渡って行ってしまった
                慌ててついていこうとするが、悲しきことかな、私にそんな機敏な動きは不可能だ
                車が通るので途切れ途切れにしか見えない幼馴染の背中を力なく見送るしかなかった










                「へぇ…あいつでもそんなことするんだ?」
                「え、というかそれかなり脈ありじゃね?やったねちゃん!」
                「そんなことないって…」
                「うんうん、最近の男は思わせぶりな態度とるかんね」
                「、どこでその知識得たの…」
                「21世紀における男のすべて!って本」


                昼休み、お弁当を持って友達のと海さんで屋上へ来た
                早速朝あったことを報告するが、反応は三者三様ならぬ二者二様
                は現実めいたことを言うし、海さんは乙女チックな結末へ導き出す
                どっちもどっちの状況だ


                「いいな〜、ちゃん。私も好きな人欲しいなぁ…」
                「いや、海さんはそのままでいいよ」
                「うん、そのままでいて」
                「え!?何で!?」
                「いや、何となく、うん、でも絶対だかんね」
                「うん」
                「何この私の意志総無視みたいなノリは!」


                突っ込む海さんに笑い転げる私と
                前に坂田先生が、3年の中でツッコミが一番なのは新八だ、なんて言ってたけど、
                海さんも結構素質あると思う

                そう思った時、校内放送でが呼び出された
                慌てて去っていくを見送り、海さんと一緒に空を仰ぐ


                「さっきの…話、さ」
                「うん?」
                「本気にはとられないのかな、私の場合」
                「………そんなことないよ」


                不安そうにおずおずと尋ねる海さんは可愛い
                いつものおちゃらけた感じなんかなくて、ただひとりの素直で優しい女の子
                同性の私でもときめいてしまうくらいだ、男子にはイチコロだろう


                「好きな人、いるの?」
                「…ん、まだわかんない」


                ほんのり、頬が染まっているような気がした
                そんあ様子に昔の自分をつい重ねてしまう


                「ただ…うん、なんていうか…アレだよアレ!」
                「どれだよ」
                「どっちつかず?んん…ていうかそもそも好きになった基準はどこ!?」
                「無茶振りだね」
                「ははっ、ごめんぬ」
                「ごめんぬて…」


                いつから、だっけ
                総悟が好きって自覚したのは

                あぁ、そうだ中学生のときだ


                「ちゃんの場合、沖田くんがあるでしょ?」
                「うん…」
                「だからわかるかなーって」
                「何だろう…ね」
                「ちゃん?」


                ほんと、何でだろう
                今さらなことなのに

                総悟が好きになったのはあの事件があったから
                必死に守ってくれて、傍にいてくれた
                だから総悟が好きになったっていうだけなのに

                あの事件でついた傷はそんなに深かったんだろうか


                「え、泣いてるの!?どうしたの!?」
                「何…でもな…」
                「ごめん、何か聞いちゃいけないことだったんだよね、ごめんね!」
                「ううん…」


                おろおろとうろたえる海さんに申し訳なかったけど、涙が止まらなかった










                「、今日は何時に終わるんでィ」
                「今日は生徒会ないの。テスト一週間前でしょ、今日から」
                「あぁ…そういやぁ…」


                その反応から勉強してないんだろうなって読み取れる
                けれど総悟の成績はそこそこ良い
                殆ど勉強していないことから考えると良すぎる点数を取る
                勉強の能率がいいんだろうか、うらやましい限りだ


                「総悟は何か用事?」
                「…ん、ちょっとねィ」
                「じゃ、待ってる。図書室にいるから」
                「わかりやした」
                「じゃあね」


                軽く手を振って別れを告げる
                どうせまたあのSOSとかいうやつの用事だろう
                何とかして突きとめよう、と思っていたものの今日は精神的にしんどくてエネルギーが足りなかった

                図書室に向かう途中の廊下に紙ヒコーキが散乱していた
                こんな幼稚なことするのは誰だ…と思いつつ拾う

                「生徒手帳で作ってるし」

                ご丁寧に一枚破いては折り、という感じで作ったのだろう
                私が拾ったのは日常生活で困ったとき、という項目のページだった

                悩みごとがあるときは保健の先生に相談しましょう
                保健室は生徒の体の怪我だけではなく、心の怪我も治療する場所です


                「保健の先生、ねぇ…」


                だらしなく首にぶらさがったネクタイ、いつもボタンが空いてはだけだ服装
                むせるような煙草の匂いが脳裏にちらついた


                 「治療してくれるんでしょーかね…」


                 けれど病気であることに変わりはない
                 今の私はまぎれもなく高杉先生への依存症だ











             アトガキ

                 巻いてみた。ヒロインの髪(笑)
                 学校とかでも物凄い綺麗に巻いてる生徒とかいますが…、
                 正直誰に見せるためにやってんだ?とか思っちゃうばばくさい私…(笑)
                 でも髪をくるくるに巻いてる世界史の先生のことは精霊と呼んでますv