本当に此処は日本なのか、と思うような英国式のテラスには居た
執事の蝦原が入れてくれた紅茶を一口飲んで、ほうとため息をつく
風にのって揺れている木の葉の音が何とも綺麗で目を細めた
CHILD SECTION.1 新しい生命
「こんなにゆっくりするのって、久々かも・・・」
最近は大学のレポートが結構立て込んでいた
は跡部と結婚したものの、大学に行きたいという願いは叶えられて跡部の姓で大学に通っていた
跡部と結婚したのは去年の11月で、今は10月だからもうすぐ結婚生活一年目を迎える
跡部は大学生をしながら親の会社をたまに手伝っているのですれ違いが続く新婚さんという感じだった
疲れて帰って来た跡部の肩を揉んであげることや、面白かったことや嬉しかったことを話す
それだけで良いと跡部は言ってくれたけれど妻という立場としては少し寂しくも感じた
「ま、こんなこと言ったって。私の出来ることは限られてるけどね」
苦笑して、庭にある噴水を眺めた
あれはロココ調だと言われたがイマイチ解らない一品の一つである
それでも、太陽の光にあたって輝く水が綺麗だった
跡部は何気ないところでいつも自分をリードしてくれている
あの噴水を造らせたのも、庭の隅に専用の花壇を造らせたのも全て跡部
一般ピープルでは考えられないほどの行為だが、跡部なりの優しさなのだろう
中学生時代から付き合って、結婚して、今までずっと一緒にいる
一緒に過ごして得られたたくさんの尊いものは多いのに、月日が経つのは早く感じた
それでも一緒に刻んだ月日の長さは変わらない
結婚一年目なんてまだお互いを曝け出せないって言うけどホントにそうだと思った
特に、跡部の場合は
疲れていたらすぐに寝ちゃうし
別に悪いことではないけれど、妻であり恋人でもある自分に甘えて欲しい
反対に自分はいつも甘えてしまうから、という理由もあるが・・・
どこまでも完璧な人
生まれつきだとは思うけれど、どこか気持ちを許せる場所を創ってあげたいと思った
誰よりも愛しくて、大切な人だから
「ただいま」
「お帰りなさい!今日は早かったんだね」
久しぶりに跡部と話をしたような気がした
前に見たのは二日前の寝顔
はその日レポートを提出して安心しきって夕方くらいから真夜中まで爆睡していた
跡部はお義父さんの会社に行ってたから十一時過ぎに帰ってきたとメイドから聞いた
「お前も、今日は起きてるじゃねぇか」
「お昼寝はすでにたっぷりしたの。今日は二限しかなかったんだもん」
「そうか・・・、それでレポートは間に合ったのか?」
「うん、お蔭様でね。」
はソファから立ち上がると跡部の傍に行った
久しぶりの愛しい人の顔を少しでも近くで見たいという願望
そしてそれは跡部ももっていたようだ
自身の服の袖を引っ張るを見て跡部は淡く微笑んだ
愛しいものを壊さないように優しく頭を撫でてやる
少ししゃがんで身長差を埋めて柔らかい頬に軽く口付けた
「今日は、一緒にいられるの?」
「あぁ、夜も特に予定は無ぇ。今日はたっぷり愛してやるからな?」
真っ直ぐと目を見つめて言えば真っ赤になって、は自分の顔を見せないように跡部に抱きついた
だがそれもの真っ赤に染まった耳を見れば解ることで、口角を上げた
自分もの体に腕を回して抱きしめてやるとの体重がこちらにかかってきた
跡部に身をゆだねるようにしては黙っている
早鐘を打っているような心音が胸を通して伝わってきた
「跡部・・・」
「あん?」
「・・・・・・気持ち悪い、かも」
「あ?」
身を離して表情を覗き込めばそこには真っ青ながいる
額にはうっすらと冷や汗が滲んでいた
「吐くか?」
「ん・・・。」
「まだ吐くんじゃねぇぞ。」
微かに頷いたのを確認してを抱き上げた
部屋の入り口まで連れて行き、後はメイドに任せる
先ほどまで暖かかった部屋が妙に寒く感じた
「景吾様」
「・・・お前か」
しばらくして年配のメイドがやってきた
そわそわと落ち着かない跡部の様子に小さく笑っている
「様は、ご懐妊でございますわ」
「何・・・?」
メイドをゆっくりと見据えた
彼女は微笑んでいるだけで何も言わない
「そうか・・・・・・」
「先ほど、医師の方にも診て頂きました。様にも直接確認を」
「に、会ってくる」
急遽こしらえられたというの寝室に足を運ぶ
その間も跡部は実感が湧かなかった
(俺とあいつの子供・・・?)
いつかは出来るものだと思っていたし、望んでもいた
けれど、いざとなればその重みと喜びは大きい
何よりも、に早く会いたかった
「景吾」
「・・・。本当か?」
「うん。今、三ヶ月だって。どうりで生理こないと思った」
「・・・・・・普通、気づくだろうが」
「忘れてたのー!」
が横たわるベッドの傍に腰掛けた
ベッドの上のは幸せそうな笑顔を浮かべていた
自分のお腹の中に、小さな命が宿っている
それも、自分と好きな人との子供が
がそんな喜びを受け止めていることがすぐにわかった
「景吾、嬉しい?」
「まぁな・・・」
「本当?」
がばっと起き上がったを見て慌てて腕を伸ばした
でもそんな助けはいらないとばかりにの腕に振り払われる
「解ってる?跡部景吾の子供がいるんだよ、ここに」
行き場を失った腕を今度は掴まれてのお腹に当てられた
まだ膨らみもあまり目立たない、けれどそこには確かに命が宿っている
「・・・そうだな、嬉しいぜ?」
「ホントかなぁ・・・」
お腹を圧迫しないようにを抱きしめた
の視線が目に見えない今、少しだけ素直になれるような気がした
「父親・・・か」
不安でないと言ったら嘘になる
けれど確かに腕のなかにある愛しい人
今はまだ小さな体しか持たない愛しい子
それらを守りたいという気持ちは自然に芽生えていた
「女の子かな?」
「男だって可能性もあるんだぜ」
「わかってるよ」
自分が弱音を吐いたりしてはいけない
彼女に、自分の弱っている姿を見られたくない
彼女の前では完璧な自分でありたいから
彼女が好きだと言ってくれた自分でいたいから
「守る、からな」
「・・・・・・うん」
君を、まだ生まれぬ命を
「愛してる」
この感情が、胸に宿る不安さえも消したことを
いつか君にも話すだろう
けれど、今はまだ黙っていよう
自分のすべてを知って欲しいと思う時が訪れるまで
そして、跡部がすべてを解っているを知るのは、もう少し先の話―――――
あとがき
久しぶりの帝王との結婚生活up
子供ネタ編の跡部ということもありますが、今回はあんまり俺様跡部じゃありません
直接的な描写が無いので解りにくかったかもしれませんので、ここで補足
跡部が何で不安だったかというと、新しい命が生まれてくるってことがすごく重要なことだと解ってたからです
逆にヒロインは子供が出来て嬉しいという感情が大きくて、そういうことまでは考えてないという事実が隠されてます
その分、ヒロインはまだ跡部に甘えてるし、跡部も自分の考えをヒロインに言わない分ヒロインに甘えてるってことですね
ヤンパパとヤンママですから(笑)まだまだ未熟ですよ。
俺様な性格を残しつつ、何だかんだいって奥さんと子供が好きな跡部が書けたらいいなぁと思ってます。
今後の跡部様にご期待下さいませ。