銀魂高校の第三学年には最強のドSコンビが存在する
共に、サディスティック星からやってきた王子、女王として人々から畏怖の念を抱かれていた…
上昇気流
2.more and more
「付いてくんなよ!」
「そりゃあこっちの台詞でィ!」
持っていた鞄(辞書入り)で顔面をぶったたいてやろうと振るえば、
がしりと腕を捕まれる
そこは男女の差で、いくらサディスティック星の女王でも適わなかった
「ぎゃー!ちょっ、離してよ、キモい!」
「何だと?アンタぁ…本気でやりますぜ?」
「キモいキモい!!私に触っていいのはあの人だけだから!」
「そこで密かに知られざる恋バラしてんじゃねぇ。
あ…この家…じゃねぇかィ?」
表札には、と書いてある
お互いに同じタイミングで手を離すと、どちらがインターホンを押すかで迷ったが、
妃葉の飛び蹴りでピンポーン、という音が響いた
『はい』
「あの…すいません。僕、さんの学校の友達で沖田って言います」
「誰だ、お前」
『あら、お見舞いに来てくれたの?どうぞ上がってください』
「おばさん、こんにちはー」
『妃葉ちゃんも来てくれたのね。ありがとう…もきっと喜ぶわ』
しばらくしての母が出てきた
丁寧に案内され、手土産のケーキを渡す
どうぞ上がってください、とスリッパを出され、の部屋の前まで通された
「熱はまだ少しあるみたいなの…でも注射は打ってもらったから、きっとすぐ治るわ
お茶淹れて来ましょうね」
「あ、そんな…どうぞお構いなく」
「誰だ、お前…」
「ふふ、ゆっくりしてらして…」
とたとた、との母が階段を降りて行った
その次の瞬間に妃葉の肘鉄が沖田にクリーンヒットし、
もろに攻撃を受けた沖田がうずくまっている間に妃葉はとっととの部屋のドアを開くのだった
「やっほー、大丈夫?…」
「妃葉!わざわざ来てくれたの?ありがとー…」
「あーもう…これぐらいのことで泣くな泣くな」
「嬉しいよう…ありがとうー…へへ、ありがとー…」
「それ以上ありがとう言ったら眼球にピン球当てるよ?」
「すんまっせーん…」
「元気そうですねィ」
腹をさすりながら沖田が登場した
腹は痛くてもいつも通り振舞うことを忘れない
「沖田くん!?」
「元気そうで安心しやした。お見舞いでさァ」
「沖田くんも…わざわざありがとう…」
「こんなこと何でもないですぜ?早く良くなって学校来て欲しいですからねィ」
「うん…沖田くんと妃葉が来てくれたんだもん。
これで元気にならなくちゃ呪い殺されそう」
ふふっとは笑った
「何でよ」
「何がでィ」
「何でに構うわけ?」
帰りの電車の中で、妃葉は突然切り出した
だるそうに沖田が振り向けば、妃葉の視線は先ほどと変わらず窓の外
少し眉間に寄った皺が不機嫌さを語っていた
「アンタ…もしや、俺のこと…うぼぇっ気色悪ィ…」
「誰がだァァ!!私の心は雲雀先輩のものじゃァァ!!」
「まーた華帝響高校の雲雀先輩ですかィ…。わかってらァ…一種の冗談でィ」
「こっちまで気持ち悪くなるわァァ!!…真面目な話」
ぐいっと襟元を引っ張られる
沖田は1つため息を零すとぽつりぽつりと語りだした
「ありゃあ…夏前だったねィ…」
『あれ?』
誰もいないと思っていた体育館に、声が木霊する
驚いて素振りする手を止めて声がした方を見やると、どこかで見たことがある少女だった
『さんじゃねぇですかィ』
『あ、Z組の沖田くん。あのね…妃葉、どこ行ったか知らない?』
『さっき職員室に行くとか言ってましたがねィ…すぐ戻ってくるんじゃねぇですかィ?』
『そっか…じゃあ…ここで待ってようかな』
にこ、と笑っては腰をおろした
再び竹刀を握ったものの、後ろからの視線をガンガン感じて、何となく続ける気になれなかった
からん
竹刀を床に置く音が響く
滴り落ちる汗をタオルで拭うと、自分もの隣に腰を降ろした
『アンタも毎日ご苦労なこって。あの女に弱みでも握られてんですかィ?』
『あはは…そんな訳ないでしょ。妃葉、すごく練習頑張ってるから、応援してあげたいの。
それに、応援してくれたら頑張れるって言ってくれたから…。
でも、毎日と言えば沖田くんもだよね?』
『何がですかィ?』
『毎日、練習頑張ってるじゃない。卓球部は練習毎日だけど、剣道部は毎日じゃないんでしょ?』
『あぁ…。まぁ、こいつはストレス解消みたいなもんでさァ。
竹刀振ってると自然と心が落ちつくんでね』
『それに強いじゃない。こないだの大会でも賞取ってたよね。
きっと一生懸命練習してるからだよ、すごいねー』
『すごいのは…アンタでィ』
訳がわからず小首をかしげる
その細い手首を掴んでやれば、びくりと肩が震える
『俺が…怖くねぇのかィ?』
『何で?』
『大抵の女は、ここで泣きまさァ』
どすっと鈍い音が響く
竹刀がの首すれすれを通って壁に当たった
『だって、沖田くん。何にもしてないもん』
『してるじゃねぇかィ』
『違うよ。しようとしてる…でしょ?』
『とんだ楽天家でさァ…』
『違うよ。
私、こう見えてもドMだからね。
それに妃葉に毎日いたぶられてるから、こういうのは慣れてるよー』
ふふっと笑う
純粋に見ればそれは可愛い
ただ、沖田にとっては
妙に腹ただしいものでしかなかった
何がドMでィ
そう言ってる割には泣きもしねぇ…
こいつも嘘ぶっこいてる女どもと変わりねぇ
俺に近づきたくてこうしてるだけだ…
いつか、ぐちゃぐちゃに泣かせてやりまさァ
「以上、あの夏の思い出より…」
「全然わからんわァァ!!何の説明にもなってねーじゃねーかァァ!!」
「俺ァ、あの女が嫌いなんでィ。
綺麗で、憎たらしいくらい素直で…それを壊しちまいたくなる」
「………」
「本当は、優しくしてやりてェんですがね。
こいつは一朝一夕でどーにかなるってもんでもねぇらしい。
おそらく俺みたいな曲がりくねった愛情受け止められんのはこの世界にはいねぇでしょう」
「でも…好きなんでしょ?」
おずおず、と尋ねる妃葉をらしくないな、と思った
にやっと笑いながら言いのける
「それを、今確かめてるんでィ」