梅雨夢企画
〜テニスの王子様・丸井ブン太〜
「あぁー!俺の、俺のケーキがぁ!」
一つの嘆き声がテニス部の部室に広がった
その声で、全員何だ何だと振り返る
「ジャッカル!俺のケーキ食ったか!?」
一番最初に目についたジャッカルの襟元を掴んで、詰め寄るブン太
ジャッカルは息苦しそうに答えた
「食うわけないだろ、お前の恨みが怖い」
「じゃあ赤也!お前か!?」
「違うっスよ!」
全員に詰め寄り、全員が首を横に振った
ブン太は、この世の終わりだとばかりに落ち込み、それでも何とかジャージから制服に着替えた
「せっかくに作ってもらったのに・・・」
ぼそりと呟くとこつぜんと消えたケーキのことを思い出し、またため息をついた
扉を開けると、夕日が照らす運動場の中に動く影が一つ
「あ、ブン太。着替え、終わった?」
「あぁ・・・」
彼女は、
丸井ブン太の恋人であり、手芸部の部長
部活帰りは一緒に帰る約束なので、は待っていたらしい
「ブン太、どうしたの?元気ないよ」
「あぁ・・・」
さっきから何を話してもそれしか言わない、と頬をふくらませた
傘を左手に持ち直して、身をブン太に少し寄せる
「雨の日ってやだよねー。ジメジメするしさぁ」
「あぁ・・・」
「雨の日って私好き!何か雨音が楽しくない?」
「あぁ・・・」
「・・・・・・・・・」
それ以来、は黙りこくってしまった
それは、彼女が完璧に怒っているときにする癖
そうなればブン太はあの手この手で機嫌を取り戻そうとするが、彼の頭にはケーキのことしかなかった
「ここで、いいわ」
「え・・・?」
四辻角で、はそう言った
ブン太はいつもの家の前まで送っていく
この角からの家まではもう少しあった
「ブン太の家、こっちでしょ?いつもあたしの家まで行って戻ってくるのも何だから。じゃあね、バイバイ」
「おい、待てよ!」
「今のブン太と話したくないの!そんなブン太、嫌いよ!」
金槌で、殴られたような衝撃だった
ぱしゃと水音がして、が自分の元から走り去っていく気配
ブン太は深い後悔に駆られた
「ケーキ?」
「そうじゃ、すごい剣幕で捜しとった」
「俺まで犯人扱いされて大変だったんスよ!」
次の日の休み時間、仁王と赤也に偶然会った
二人の話を聞けば、があげたケーキをブン太がなくして、その在り処をずっと考えていて上の空
だからの話を聞いてなかった
「ブン太!」
「!悪い、昨日はホンット悪かった!」
頭を下げた大声で誤るブン太にはぎょっとした
ここは教室。いくら公認の仲とはいえ、注目の視線が痛い
「ね、ブン太。失くしたケーキって昨日あげたやつ?」
「おう!・・・って何でが知ってんだよ」
目を丸くするブン太の目の前に、見覚えのある箱が渡された
中を開けると、ブン太がずっと頭に描いていたケーキが顔を覗かせた
「おぉ!これだこれ!何でが持ってんだ・・・?」
「もう・・・、何にも覚えてないのね・・・」
は昨日、だいぶ前にブン太に頼まれたケーキを作って学校に持ってきた
ブン太に渡すと案の定大喜びで、でもその前にあげたケーキを部室に置いといたら湿気でカビが生え
だからが放課後まで預かることにした
ブン太はそのとき、テニスボールで遊んでいて、あまり話を聞いておらず、放課後もそれを忘れていて・・・。
今に至る
「え、預かるって・・・、お前、そんなの言ったっけ?」
「もう!いるの?いらないの?どっち!?あ、いらないのね」
「わーっ!いるいる!」
箱を取り返すと、がくすりと笑った
「じゃ、遠慮なく頂きます・・・」
「どーぞ」
ブン太は、嬉しそうにケーキの一口目を頬張った
甘い、甘い、が作る美味しいケーキ
「美味ぇ!、最高だぜ!」
ブン太の一言には満足そうに頷いた
☆あとがき
何か微妙な終わり方ですみません。
しかもブン太くん、ものすごくケーキにしか目がないみたいですが…。
彼はヒロインが作ったケーキじゃないとここまで惚れ込まないよ、という意味ですので!