梅雨夢企画
テニスの王子様 〜真田 弦一郎〜
しとしと、雨が降る
雨が降れば鬱だという方が多いけれど、私はそうじゃない
素敵な音楽の始まり
紫陽花が咲いたら、私はあの方に・・・。
「約束しよう。紫陽花が咲いたら、婚約すると」
今でも脳裏に浮かぶあの方の柔らかな笑顔
笑うのは不得意なはずなのに私の前で無理して笑う姿
すべて、愛しい
「こんにちは、弦一郎さん」
「?あぁ、か」
真田は、薄く目を開いて愛しい許婚の姿を瞳に映した
彼女は屈託の無い笑顔でこちらを見ている
「修行の邪魔をしてしまいましたか?」
「いや、かまわない。ちょうど休もうと思っていたところだ」
真田とは幼いころに決められた許婚という仲だった
許婚という関係の前に、幼馴染として仲の良かった二人には、
親が勝手に決めたことだという自覚はなく
それこそ花の蕾が少しずつ色づき、花開いていくような穏やかな恋だった
今年で真田とは15になる
中学校生活も今年で最後
楽しかった中学校を離れ、次はまだ未知なる体験を秘めた高校へと進むのだ
幸いなことに二人は、同じ学校に通っているため、離れる心配はなかった
「昨日の晩にね、夢を見たんですよ」
「ほう、どんな夢だ?」
縁側から身を乗り出してが言うと、真田は座敷の中央からこちらにやってきた
「昔の夢です。遠い遠い、私たちが小さい子供のころの夢」
「まだ十五年しか生きておらんのだぞ?一体いつの話だ」
くっと真田が笑うともつられて吹き出した
しばらく二人の小さな笑い声が座敷に響く
「・・・ふふ。ごめんなさい、何だかとっても昔に思えちゃって」
「しかし、その夢に俺は出てきたんだろうな?」
「それはもちろん。だから面白いんです」
の言葉に真田は解らない、という表情をした
は真田の顔をまじまじと見つめるとまた吹き出した
「・・・何だ?」
「だって、弦一郎さん。昔からこんな性格だったんだなーって思いだしちゃって・・・」
幼きころよりその身に武術を染み付け、常に己を磨いてきた真田
努力、という言葉一つでは表せなかった
「弦一郎さん。昔、お庭で遊んでたときのこと覚えてます?」
「あぁ。覚えている」
真田は目を細めてが腰掛けている縁側を見つめた
そこには手入れがいきとどいている日本庭園のような庭が広がっていた
「丁度、今みたいな時期に、私は弦一郎さんに約束してもらったんです」
「・・・したか?」
「まぁ、ひどい。しましたよ!」
真田はぽりぽりと頭を掻いて遠い日の記憶を思い出すように目を閉じた
幼いころより明るかったの笑顔が浮かんでくる
しかし肝心の約束、とやらは思い出せなかった
どんな約束だ?
などと聞けやしない
彼女は思い出すのを今か今かと瞳を輝かせて見ている
「・・・紫陽花が咲いたら、なんて。」
「ん?」
「紫陽花の花言葉ってあまり良いものじゃないでしょう?
それなのに紫陽花に誓うなんて、弦一郎さんも要領が悪いというか何というか・・・」
「話がまったく見えてこないな」
「それは忘れてしまう弦一郎さんが悪いんです」
がこちらに向けていた視線を庭に移した
自然と風に乗って流れる彼女の髪
真田は自分の動きにスローモーションがかかっているように思えた
さらりとした髪に触れると、振り向いた彼女
その表情はどこか悲しげで、寂しげだった
「・・・すまんな、」
「別に良いです。そういうことってよくありますもんね。
子供のころ約束しておいてパックリ忘れるなんてこと!」
の言葉の端々に棘を感じた真田は冷や汗を流した
は怒らせると中々口を聞いてくれない
「怒ってなんかいませんよ?もう一度同じこと言ってくれればいいだけなんですから」
「・・・・・・・・・」
その言葉が思い出せないのに、それを解っていて彼女はこんなに悪戯っぽく笑っているのか
真田は小さくため息をついての隣に座りなおした
雨粒に揺れている紫陽花の花びらが少しずつ色づき始めていた
☆あとがき
珍しくヒロインの性格固定に成功しましたよ!
大人っぽい真田さんにはやはり大人っぽいヒロインを!
真田さんて許婚とか似合ってそうっスよね…。(←妄想爆心中)