2.ちょっとテレるね
二本ならんだストロー
想定外
何もかもが想定外
いや、性格には半分は想定内でもう半分は想定外
なんて、流行語で考えを占めてみても現状は変わらなかった
「ほら、出来たぞ」
「ありがとー。さっすがテニス部レギュラー!肺活量すごいねー」
「誰のせいでこうなったと思ってる…」
はぁ、と深く息を吸い込む宍戸は不機嫌な顔をしていた
もうすでにここで想定外の匂いが漂い始める
私の中では、今頃仲良くシャチ型のおもちゃに乗って戯れていたはず
でも現状は空気を入れるポンプを忘れ、全て口から空気を入れきって疲れきった宍戸がいるだけだった
文句こそそんなに言いはしないが、顔で文句を言っているような気がする
それもそうだろう
「そういや、昼飯どうする」
「へへ・・・それなら任せて!じゃっじゃーん!作ってきましたー!」
「おぉ!やるじゃねぇか。期待していいんだな?」
「もっちろん!」
敷いたばかりのレジャーシートに座り、こっちを見る宍戸
その顔は私の好きな笑顔だった
次に私の目に映った逞しい腕が、私の頬に触れた
感触を確かめるかのように優しく撫でられ、離れていった
「な、何。いまの…」
「なんでもねーよ。お、アイス売ってっぞ?食うか?」
「あ、アイスよりもね。あれ飲みたい!」
の差した方向を見るとなんとも派手な看板が出ていた
『人気絶頂!トロピカルソーダ!』
「いいぜ、買ってやるよ。ちょっと待ってろ」
「うん」
少しした後、宍戸が戻ってきた
手にはカップルで飲むと相性アップ間違いなしのトロピカルソーダがある
「ほら」
「ありがとう。え、あ、れ…?し、宍戸これストロー二本なかった?」
「ん?あぁ。あれか。捨てた」
「は、はぁっ!?」
一つのグラスから二本のストローで飲む
がずっとやりたかった定番を彼氏に見事なまでに打ち砕かれた
「あ、でも一本でもある意味いいかも!」
「は?飲むのはお前1人なんだから、一本でいいだろ」
「なっ、ち、違うよ!これは宍戸と…!」
「あぁ…でも捨てたのは勿体なかったかもな。家持って帰っても良かったし」
名残惜しそうにゴミ箱を見る宍戸
全身から力が抜けていくのがわかった
どこまで、鈍いんだろうか…
「なんだよ。そんな顔して」
「…別に。いいわよ、一人で飲むわよ」
「…?」
トロピカルソーダは味も中々だった
ふと横を見ればカップルがイチャイチャしながら一緒にそれを飲んでいる
自分も出来るものなら同じことをしたいものだ
「一口、寄越せよ」
「ぁ…っ」
がし、とグラスが宍戸に持っていかれる
力強いその行動にグラスを簡単に明け渡してしまった
(こ、このままいくと間接キス…!?こ、これもこれでおいしいっ…!)
食い入るように見つめると、宍戸はソーダをグラスから直接飲んだ
またしてもの期待を裏切ったのである
「宍戸ってさ…。」
「あ?」
「なんもない…」
むっとした私の表情に多少疑問を浮かべていたが、何も心当たりがないからか宍戸は立ち上がった
先ほど膨らませたばかりの浮き輪やらシャチやら両手に抱える
「ほら、泳ごうぜ」
あれこれ妄想を繰り広げていた自分が妙に虚しくなった
女も男と同じくらい妄想するっていうけど、本当にそうみたい
宍戸はスポーツマンだから爽やかだし、跡部みたいに女慣れしてないし
「何ぶつぶついってんだよ」
「…なんもない」
しょうがない、か
とりあえずそれで済ますことにした
だって、私を誘う今のあなたが
すごくカッコイイから
でも、デートはまだ始まったばかり
覚悟しなさいよ?宍戸
あとがき
にぶい宍戸さん、万歳!きっと何にも解ってない!
絶対女の子のほうが色んなことを想像して撃沈していそうだ…。
シャチを口で膨らませられる宍戸さんは肺活量すごいわね。ジャッカル並み?
でも、疲れ切ってるんだから、無理してるんだろうなぁ…。