「まぁ、天女のような美しさ、とはまさにこのこと!」
「羨ましい限りですな、幸村殿」
「そう恥ずかしがらずに、お二人とも!」



「「は、はぁ……。」」










     嫁に来ましたッ!

          act.4 心の音










盛り上がる一同
幸村の婚約者がやってきたのだ、盛り上がるのも無理はない
勿論、早急に宴は開かれ、は女官たちの手によって衣装がえをされた
遠慮はしたものの(男に近づきたくないだけ)、信玄から直属で開かれた宴会なので、断るわけにもいかない。
おまけにこの宴の主役は幸村となのだ、主役が欠席となれば、皆がっかりするであろう。



「幸村、専属の酌注ぎがいて良いな!」

がっはっはと笑う信玄を幸村は黙って見ていた
平常心を保っているように見えるものの、実は先ほどから限界である
幸村の隣には、当然のことながらが座っていた
彼女はなるべく幸村と接触しないようにしているが、時折周りにかきたてられ、頬を染めている
先ほど、此方へ来たときの衣装とはうってかわっての着物を着用している


「幸村様、おつぎしましょうか…?」
「あ、あぁ。」

幸村の視線を感じたのか、くるりとが振り向いた
は幸村の杯に酒を注ぐと、また元の体制に戻った
幸村からはの横顔しか見えない
微かに身じろぎしたからは甘い花の香りが漂い、鈴の耳飾が涼やかな音をたてた。
それらのことに、女、ということを感じてしまい、益々顔を赤らめる幸村であった。



宴も段々と盛り上がりをみせており、皆は主役のことも忘れ、大いに宴を楽しんでいた
音楽が鳴れば、誰かが歌い、舞い
追加の酒が来れば、酒豪のいっき飲みが場を盛り上げた

酒が入って出来あがってしまったオジサンたちには女官達も困り顔で接している
は、酒の匂いに思わず胸が気持ち悪くなったが、
これからこういった機会が増えるのだろうか、と思うと益々気持ち悪くなった


(はぁ…、早く終わらないかしら…。いつまでもいつまでもこんなところで
にっこり笑ってるのも疲れるわ…)

宴の終わりを今か今かと待ちつつ、ちらりと幸村を見た
彼はこちらの視線には気付いておらず、ぼんやりとしていた

先ほどについでもらった酒を一口含めば、酔いが回ったのか、顔が赤くなった
どうやら酒が相当弱いらしい

たくさんの武将から祝いの酒とばかりに飲まされているのもあるが、
幸村自身、酒が強くないのであろう、ということが見てとれた。









「幸村が出来あがってきおったな!がっはっは!!」

あんたも人のこといえねぇだろ、とは言葉を発した信玄を見て思った
幸村ほどではないが、信玄も酒で顔を赤くさせている



「幸村様、お休みになられますか…?」


仕方ねぇなぁ、チッ。と思いつつも心配げに倒れこんでいる幸村を見つめると……


「きゃあっ」
殿ぉ〜っ。某はぁ〜っ…!」


は完全に酔っている幸村に抱き寄せられた。

頭をすっぽりと抱えられるような態勢の
の耳には幸村の胸がぴったりとくっついて、早鐘のような早さでうつ心臓の音が聞こえた。
その音にも、密着している身体にもの顔は赤くなった
自分が幸村を意識して顔を赤くさせている、ということが解って、羞恥心に幸村から離れた



「おっ、お戯れはおよしください!」
殿は…某が嫌いでござるか…?」


うるっと涙ぐむ幸村
はその表情を見て、言葉に詰まった

(泣き上戸かー!!!!!!!)

心の中で精一杯叫びながら、自分に向かって伸ばされた幸村の手をはたいた

「き、嫌いですわ!!」


おもわず反射的にそう叫んだ
その言葉に辺りがシンと静まりかえった

はそっと後ろを振り向いた
宴に出席している全員がこちらを見ている
は、とんでもないことをした…ということを改めて自覚すると
急に不安になってきた

(も、もしかしてヤバいんじゃあ…。婚約者の私がこんなこと言っちゃ…)

口元を手で被うと、その時大きな笑い声が響いた
は、きょとんと様子を見ている
先ほどまで目を点にしてこちらを見ていた者たちが全員笑いこけている
信玄にいたっては腹をさすってまで笑いこけ、はバッチリとその様子を確認した


殿ぉ〜っ!!!」
「だっ、ですから!抱きつかないで下さい!!」

猫のように甘えてくる酒に酔った幸村をはらいのければ益々笑い声があがる

「こっ、こいつは…良い!」
「ぎゃっはっはっはっは!」

どうやらに拒否されてしょんぼりと項垂れる幸村と
男になれていない、ということが見てとれるの姿が面白いらしい

、幸村を部屋へ連れていってくれるか?」

笑いの波がようやく止んだのか、信玄の発言には素直にうなずいた
幸村を連れて行くのは乗り気にはなれないが、一刻も早くこの場を立ち去りたかった

は軽く会釈をして、幸村をひきずりながら宴の席をあとにした。





















「重かった……って感じなのよ!!このやろぉー!!!!!!」

勢い良く寝台に幸村を放り投げると、はきっと幸村を睨んだ
先ほどとは違い、穏やかな寝息を立てる幸村
あまりにも寝顔が穏やかなので、苦労してきた自分がどこかムカついてくる


「あーあぁ…。これから毎日ずぅぅぅっっっっとこんな感じなのかしら…。
 気が重いなぁ…」

自然と襲ってくる眠気には耐えたが、どうにもできず、とうとう寝ることに決めた
さすがに寝台には幸村が転がっているので
椅子を寝台の傍に置き、腰掛けると寝台に頭をのせた。

微かに聞こえる幸村の寝息が子守唄に聞こえる
暖かな気持ち
穏やかな気持ち
この気持ちをどう表せばよいのであろう




はこの瞬間だけ、幸村を好きになれるような気がした











アトガキ

今回は佐助は登場しませんでした・・・!
ゆっきーがメインでしたね。次回は佐助メイン予定です。ゆっきーも出張りますが・・・。
武田軍の人達、爆笑しすぎです・・・。