「部屋割りはプリント通りだ。くれぐれも旅館の方に迷惑をかけないように
        いいな?清田」
       「なっ、何で俺限定なんですか、牧さん!」
       「以上、解散!」
       「牧さーん!!!」


       牧にさえいじられる清田には笑いをこらえつつ、
       渡されたプリントを見た

       やはり自分は女ということがあって1人部屋という配慮が成されている
       他の部員たちはほぼ2人か3人部屋で、1人部屋は以外、
       高頭と牧だけであった


       「宗ちゃん、信長くんと同じ部屋だね」
       「そうなんだよ…俺ちゃんと寝られるかなぁ」
       「なっ、神さん〜」
       「あはは。信長くん?もし宗ちゃんがあんまり怖かったら私の部屋に来てもいーよ?」
       「まじっスか!?やったぁ!」
       「まぁ、そんなことにはならないと思うよ。俺がいる限り」

       爽やかな笑みの裏にドス黒いオーラを感じて清田は一歩後ずさった
       も苦笑を浮かべ、これ以上刺激するのはまずいなと悟る

       自分の荷物を手早く持つと、一足先に部屋へ向かった










       「わぁ…広い部屋。これ本当に私1人で使っていいのよね…?」


       野山を一望できる部屋は1人部屋にしては広い
       全員でとる夕食の時間までは自由時間が与えられているわけで、
       はのんびりとその景色を眺めていた


       「
       「宗ちゃん」


       声をかけられて振り向くと戸口には神が立っていた


       「すごい綺麗だね、ここ」
       「うん!宗ちゃんの部屋は?」
       「俺のとこも綺麗だよ。でもこっちのが良いなぁ」
       「やった、勝った!」
       「はは…」


       神が隣に来て、同じように景色を眺める
       は気付かれないようにそっと神を見つめた

       宗ちゃん、綺麗な顔だなぁ…

       くりっとした瞳に白い肌
       牧や高砂などには勿論及ばないが、しっかりとした骨格

       いつの間に、幼馴染みはこんなにスポーツマンになったんだろう


       「ん?」
       「あ、何でもない!宗ちゃん、睫毛長いなーって…」
       「そう?あ、『綺麗』は禁句だからね」
       「わかってるよ」


       くすっと笑うと神は少しむっとした顔をしていた
       幼い頃から神の容姿に対して綺麗を連発していただが、
       神も“お年頃”というのを迎えたのかさすがに抵抗があった
       そこで綺麗、可愛い禁止令をに据えたのである


       「じゃ、かっこいい…かな」
       「それは大丈夫」
       「あはは…っ」


       不覚にも男気を感じてしまったことは否めなかった
       は少しどきりとしながら神と並んで景色を堪能していた















       「さーんっ!」
       「どうしたの?」


       夕食が済み、絶景の露天風呂を堪能したが部屋へ戻ろうと歩いていると、
       後方から清田が走ってきた

       彼も風呂上りなのか、髪がまだ少し濡れている


       「こっち来てゲームやりませんか?今度は負けないっス!」
       「またゲーム?でも信長くん、宗ちゃんじゃなくても弱いからなぁ…」
       「そ、そんなぁ…今度は絶対、勝ちますから!」
       「んー…」


       正直迷っていた
       可愛い後輩の言うことを聞いてあげたいのも山々だが、
       自分は今風呂帰り。手持ちの荷物を置きたいし、髪も乾かしたい


       「何か用事っスか?」


       迷っているに気付いたのか、信長が尋ねた


       「うん、髪をね乾かしたいかなーって…」
       「何だ、そんなことかー!じゃ、俺、さんについてこーっと。
        で、さんが髪乾かすの待ってます!」
       「え!?そんな…時間かかっちゃうよ?私、髪の毛長いし…」
       「別にいいって!だって見張ってねぇとさん他の奴に取られちまうもん」
       「取られって…」
       「俺がさん守る!」


       ふん!と鼻息荒くえばる清田には噴き出した
       何で笑うんスかー!?と不満そうな清田にごめんごめん、と謝っては言った


       「じゃ、守ってくれる?」
       「了解っス!」


       野猿なんて言われているが、からしてみれば信長は犬にしか見えなかった
       いまにもしっぽと耳が見えてきそうである

       よしよし、と撫でるとそれはさすがに照れるのか、

       「子供扱いしないで下さいよ!」
       「はいはい」

       というやりとりが繰り広げられる
       こうしては就寝までの時間を信長と過ごしたのだった














       「ふー、疲れた…」

       ようやく信長を含む1年たちに解放された時には既に12時を回っていた
       部屋に帰ると布団が敷かれていて、そこにぼふっと寝転ぶ

       暫くぼーっとしていたが、ふと喉が渇いては自販機まで買いに行くことにした


       お茶を買って部屋に帰ろうと廊下を歩いていると、食器の音が聞こえた
       隅にある部屋は旅館の厨房に繋がっているようだ
       遅くまでご苦労だなぁ…と立ち去ろうとすると、従業員らしき人の声が聞こえてきた


       「椿の間…女の子1人部屋だって?」
       「大丈夫かな…ほら、あの幽霊騒ぎがあったろ?」
       「幽霊なんて居ないと思うがね…」
       「でも、前に立て続けに苦情が来たじゃない」
       「あー…あの時は大変だったな…」
       「大丈夫よぉ、お払いもしてもらったんだから!」


       は息を呑んだ
       元々こういう手の話は好きではない
       そんな部屋封鎖しておけばいいのに…と思いながら足早に部屋へ帰った


       部屋について、お茶を飲み干し、さぁ寝ようかと電気を消そうとすれば、
       テーブルに置いてあるプレートには動きを止めた

       椿の間

       そう書かれているプレート


       「な…」


       まさか自分の部屋だったとは
       いやな汗が背筋を伝っていく


       「ま、まさかね!あははは!」


       勢いで電気を消して、布団へと潜り込んだ
       眠気はすっかりさめていた
       疲れているはずなのに眠れない

       そんなに追い討ちをかけるように、部屋の隅では謎のカサカサという音が響いている


       「こ、こ、怖い……」


       認めてしまうのが怖くて言えなかったの一言が部屋に響いた

       電気を点けて、さぁどうすべきかと起き上がったとき、踏みつけてしまったプリントを拾うと
       そこには部屋割りがあった


       「む、向かいの部屋、牧先輩だ!」


       このメンバーの中では1番頼りになりそうな男が近場にいたのである


       「でもここは宗ちゃんに…」


       だがこんな夜更けに尋ねるのは失礼だろう
       幼馴染みの神になら多少の融通は利くかもしれない


       「信長くん…」


       彼も一応男の子なのだし
       おまけに守ると言い切っていたからには少し頼りに出来る


       「どうしよう…」


       しばらく悶々と悩んでいるとまたあの謎の音が響いて、
       は慌てて部屋を飛び出した


       「よ、よし…!」


       の心は決まった














       牧の部屋へ行って相談する





       神にお願いして一緒に寝させてもらう





       清田に部屋を調べてもらう